TSMCの創業者であり、半導体ビジネスにおける伝説的人物であるMorris Chang氏は、顧客からAIプロセッサー用に最大10基の新ファブを建設するよう打診されている事をNikkei Asiaの取材で明らかにした。
Chang氏は最近、現在のAIハードウェア・アクセラレーターの需要は非常に高く、同社は間もなく驚異的な速度で生産能力を倍増させなければならなくなるだろうと述べた。Chang氏は、TSMCが日本に建設した初の製造工場の落成式で演説し、アジアの国々に新たな「チップ・ルネッサンス」が起こることを期待していると述べた。
Chang氏は、とあるAIチップ企業の代表者と話をし、それらの幹部が台湾のファウンドリーに前例のない要求をしたと述べている。「彼らは数万枚のウェハーの話をしているのではありません」とChang氏は言い、TSMCに新しい製造工場を建設することを望んでいるという。このままでは、TSMCは3つ、5つ、10と新しい工場を開設する必要がある、とChang氏は述べた。
GPUやその他の特殊なチップは、高度な並列設計に基づいており、機械学習モデルのトレーニングや推論ベースのチャットボットなどのAIアプリケーションを大幅に後押しする。こうしたシリコン製品への需要はかつてないほど高まっており、企業全体が新たな産業ハイプを中心に事業を再編成している。AIブームの先駆者として知られるNVIDIAは最近、自社だけではAIチップに対する世界の飢餓感を満たすことはできないと認めた。
しかし、まったく新しいチップ製造工場を建設することは、TSMCのような数少ない世界的ファウンドリにとっても、非常にコストのかかる事業である。大げさな予測の後、Chang氏はより控えめな将来予測を示した。彼は、新しいAIチップに対する業界の実際の需要は、数万枚のウェハーと “数十のファブ”の間の“どこか”になるだろうと予測している。
TSMCの日本新工場の開所式に出席したChang氏は、1968年にTexas InstrumentsとSonyの合弁会社を立ち上げるために初めてこの国に来たと語った。TSMCを設立した後、Chang氏は当時まだ発展途上にあった半導体産業にとって、台湾と日本は文化的にも人材的にも類似していると考えた。
1980年代後半、日本は世界のチップメーカー上位10社のうち6社を占める程のシェアを誇っていた。だが半導体革命に乗り遅れた日本はその後、米国、台湾、韓国のライバルにリードを奪われた。現在、世界最大のチップメーカーはすべて海外企業となっているが、日本メーカーもイメージセンサー・ビジネス(Sony)、車載用アプリケーション(ルネサス エレクトロニクス、ローム)、NANDフラッシュ・メモリー・チップ(Kioxia)で依然として大きな市場シェアを握っている。
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