観測史上最大のガンマ線バーストが地球の電離層をかき乱した

masapoco
投稿日
2023年11月15日 6:44
Gamma

2022年10月、これまでで史上最大となるガンマ線バーストが観測された事が大きく報じられ、当サイトでもご紹介したが、「GRB 221009A」と名付けられたこのガンマ線バースト(GRB)の超強力なエネルギーは、20億光年という長大な距離を超えて、地球の電離層まで大きな影響を与えていたことが新たな研究から明らかになった。

電離層は、地球の大気の最上部に位置し、国際宇宙ステーションの軌道を超える高度まで広がっている。ここは、地球を取り巻く大気の上層部にある分子や原子が、紫外線やX線などにより電離した領域であり、電波を反射する性質を有している。今回研究者たちは、20億光年以上離れた星の爆発が電離層に影響を与えることを発見した。

20億年の時を超え地球に影響を与える

ガンマ線バースト「GRB 221009A」は、2022年10月9日に観測され、史上最も強力なGRBとして記録されている。「史上最も明るい(Brightest Of All Time.)」事から”BOAT”と名付けられたこのGRBは、「おそらく、これまで検出された中で最も明るいガンマ線バーストでした」と、今日この結果を発表したチームの主執筆者であるイタリア、ラクイラ大学のMirko Piersanti氏は言う。

この現象が地球の大気に与えた影響を調査した結果、太陽フレアに似た影響があることが判明し、研究者らの間では衝撃が広がっている。欧州宇宙機関(ESA)の国際ガンマ線天文学研究所(Integral)の観測によると、このバーストは800秒間続き、電離層の電場を地球に最も近い層まで変化させたようだ。

これは本質的に大気上層の電場の変化を指している。つまり、電離層の荷電粒子が直接影響を受けるということだ。このような電離層の擾乱は通常、太陽から発生する高エネルギー粒子と関連している。

何億光年も離れているBOATが私たちの惑星の外殻に到達したという事実に、誰もが驚いているのはそのためである。

欧州宇宙機関(ESA)のプロジェクト・サイエンティスト、Erik Kuulkers氏は声明の中で、「深宇宙で起こっていることが地球にも影響を与えるのは驚くべきことだ」と述べた。統計的には、GRB 221009Aのような強力なガンマ線バースト(GRB)が地球に到達するのは1万年に1回の割合だ、とESA関係者は述べている。

電離層の乱れは初めから認識されていたが、その真の範囲がデータの分析が進むにつれて明らかになった。この影響は電離層の最下層、約50キロメートルの高度にまで及び、地上に向かって押し下げられたのだ。ESAの太陽物理学者Laura Hayes氏は、「本質的に、電離層がより低い高度に『移動』したと言えます。そして、電波が電離層に沿って跳ね返る様子から、これを検出しました」と説明している。「注目すべきことに、この擾乱は、地球の表面からわずか数十km上空に位置する地球の電離層の最も低い層に影響を与え、大規模な太陽フレアに匹敵する痕跡を残しました」。

ESAは、「爆発の影響を分析することで、地球の歴史における大量絶滅に関する情報を提供することができる」と述べているが、このチームの論文は、BOATのような大爆発が人類の終焉をもたらす可能性を示唆しているわけではない。むしろ、この爆発は、近傍で実際に脅威となるGRBが我々の惑星に衝突した場合に何が起こるかについて、何らかの洞察を与えてくれるものだろう。

例えば、研究チームは論文の中で、「大気の電離を急激に増加させることができるので、成層圏のオゾンを地球規模で枯渇させるかもしれない」と書いている。

このようなシナリオの可能性をよりよく理解するためには、電離層とGRBの関係を理解する必要がある。研究チームはその目的のためにさらなるデータを収集する予定だ。


論文

参考文献

研究の要旨

電離の安定性が生命の進化と存続に基本的な役割を果たす地球の大気は、高エネルギーのガンマ線バーストを発生させる宇宙爆発の影響にさらされている。大気の電離を急激に増加させることができるため、地球規模で成層圏のオゾンを枯渇させる可能性がある。過去数十年間、1日平均1回以上のガンマ線バーストが記録されている。それにもかかわらず、電離層への測定可能な影響は、どのような場合でも電離層の下側(高度約60kmから約350kmまで)ではほとんど観測されなかった。ここでは、2022年10月9日のガンマ線バースト(GRB221009A)と相関のある、突発的な電離層擾乱によるトップサイド(高度約500km)の電離層擾乱と、500kmにおける電離層電場の大きな変動の証拠を報告する。



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