従来の太陽電池はシリコン半導体化合物をベースにしており、太陽光を電気エネルギーに変換する際の理論上の最大効率は29%であることが知られている。しかし、ベースとなるシリコン層とは別にペロブスカイト層を組み込むことで、太陽電池は近い将来、更に大幅に発電効率の改善が期待できると考えられており、研究が進められている。
ペロブスカイトは、酸化カルシウム・チタン鉱物と同じ結晶構造を持つ化合物の一種である。この柔軟性の高い材料は、超音波装置、メモリーチップ、発電用太陽電池など、さまざまな用途に使われている。
現在の太陽電池技術は、その最大効率レベルに急速に近づいているが、太陽光発電が地球温暖化を大幅に緩和する要因になるために必要なものにはまだ足りない。科学者たちによれば、効率は30%を超えなければならず、新しい太陽電池パネルの設置率は現在の10倍にならなければならない。そのために大きな役割と果たすと考えられているのが、ペロブスカイト太陽電池だ。
シリコンと同様、ペロブスカイトも半導体材料だが、可視スペクトルの青色光を吸収して電気エネルギーに変換することができる。一方、シリコンは赤色光を吸収する。この2つの材料を併用することで、パネルが吸収する光の総量を増やし、30%のエネルギー変換の壁を越えることができる。
エネルギー吸収能力の向上は、太陽エネルギー全体の価格低減につながるため、ソーラーパネルの迅速な導入と普及が可能になる。
ペロブスカイトは通常、シリコン層の上に配置され、このタイプの太陽電池はペロブスカイト-シリコン、あるいは単に「タンデムセル」と呼ばれる。
科学者たちは、効率的なシリコン-ペロブスカイト太陽電池技術の開発に何年も費やしてきたが、2023年にはこの分野で重要な節目を迎えることになりそうだ。最近の研究の進歩により、シリコン-ペロブスカイト・タンデム・セルの効率は30%を超えることに成功した。進歩のペースは非常に速く、この技術はまもなく市販製品でその強化された能力を発揮するだろう。
ドイツのヘルムホルツ・センター・ベルリン・フォー・マテリアルズ・アンド・エナジーのSteve Albrecht教授が率いるグループは、最近、最大32.5%の電力変換効率を達成できるタンデムシリコン-ペロブスカイト太陽電池に関する研究を発表した。スイス・ローザンヌ連邦工科大学のXin Yu Chin教授率いる別のグループは、タンデム型セルの効率31.25パーセントを実証している。
商業産業は太陽電池の効率向上に積極的に取り組んでいる。中国最大のメーカー(LONGi)は、研究室ですでに33.5%の効率に達している。次のステップは、効率的なシリコン-ペロブスカイト・タンデム・セルのサイズを、実験条件(1cm角)から商業レベルの機能(15cm角)まで拡大することだ。
論文
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参考文献
- Interesting Engineering: Tandem cells using perovskites and silicon make solar power more efficient and affordable
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