Qualcommは、今月末から多くのミドルレンジスマートフォンに搭載される最新チップセット「Snapdragon7+ Gen2」チップセットを発表した。昨年、Snapdragon 7 Gen 1を発表し、Snapdragon 8 Gen 1に続き、新しい命名規則を採用したこのチップセットだが、既にRedmiとRealmeが採用を表明している。
昨年のSnapdragon 7 Gen 1の後継として位置づけられる今年のSnapdragon 7は、機能追加よりも性能向上に重点を置いているようだ。昨年のGen 1では、ミリ波のサポートや新しいCPUおよびGPUアーキテクチャ(特にArmv9アーキテクチャのCPUコア)が追加されたが、今年はほんのわずかの新機能しか見られない。しかし、その代わりに、QualcommはSnapdragon 7ファミリーのパフォーマンスを過去最大級に向上させたと述べている。これは、Samsungの4nmプロセスからTSMCの4nmプロセスへの移行によるもので、Qualcommが昨年、製品サイクルの半ばに急遽ファウンドリを切り替えたことにより好評だった「Snapdragon 8+ Gen 1」の形を踏襲する物だ。
前モデルとの違いは以下の通りとなる。
SoC | Snapdragon 7+ Gen 2 (SM7475-AB) | Snapdragon 7 Gen 1 (SM7450-AB) |
---|---|---|
CPU | 1x Cortex-X2 @ 2.91GHz 3x Cortex-A710 @ 2.49GHz 4x Cortex-A510 @ 1.8GHz | 1x Cortex-A710 @ 2.4GHz 3x Cortex-A710 @ 2.36GHz 4x Cortex-A510 @ 1.8GHz |
GPU | Adreno | Adreno |
DSP / NPU | Hexagon | Hexagon |
メモリコントローラー | 2x 16-bit CH @ 3200MHz LPDDR5 / 25.6GB/s | 2x 16-bit CH @ 3200MHz LPDDR5 / 25.6GB/s |
ISP/カメラ | トリプル18-bit Spectra ISP ・1x 200MP or 108MP with ZSL ・64+36MP with ZSL ・3x 32MP with ZSL 4K HDR video & 64MP burst capture | トリプル14-bit Spectra ISP ・1x 200MP or 84MP with ZSL ・64+20MP with ZSL ・3x 25MP with ZSL 4K HDR video & 64MP burst capture |
エンコード/デコード | 4K60 10-bit H.265 Dolby Vision, HDR10+, HDR10, HLG 1080p240 スローモーション撮影 | 4K30 10-bit H.265 Dolby Vision, HDR10+, HDR10, HLG 720p480 スローモーション撮影 |
統合モデム | X62 (5G NR Sub-6 + mmWave) DL = 4400 Mbps 5G/4G デュアルSIMデュアルアクティブ(DSDA) | X62 (5G NR Sub-6 + mmWave) DL = 4400 Mbps |
製造プロセス | TSMC 4nm | Samsung 4nm |
CPUの構成については、Snapdragon 7+ Gen 2は、過去数世代のSnapdragon 7ファミリーに見られるのと同じ1+3+4 CPUコア構成を維持している。(Snapdragon 8 Gen 2は、1+2+2+3コア)Qualcommは、やや高クロックのミッドコアの使用から、よりパフォーマンスの高いCPUアーキテクチャの使用へと完全に切り替えているため、大きな変更点と言えば、トップパフォーマンスのプライムコアが大幅にパフォーマンスの向上が実施されていることだ。
つまり、Snapdragon 7の部品としては初めて、QualcommはArmのCortex-Xコアの1つをプライムコアに採用したことになる。ここで使われているCortex-X2は、技術的にはArmの前世代設計なので、Snapdragon 8 Gen 2とそのCortex-X3コアには及ばない。しかし、7 Gen 1のプライムコア(および7+ Gen 2のミッドコア)に採用されたA710コアと比較すると、Cortex-X2はIPCとクロックスピードの両方で大きく向上している。その結果、プライムコアのピーククロックは2.4GHzから2.91GHzに向上し、より複雑なコアによるIPCの向上がさらに進んでいる。
Qualcommは、7+ Gen 2では7 Gen 1に比べてCPU性能が「最大50%」向上すると発表しているが、そのほぼすべてが新しいプライムコアによるものだ。
しかし、Cortex-X2コアが1つしかないため、これほど大きな性能向上はシングルスレッドのワークロードにしか利用できない、というトレードオフがある。3つのミドル(パフォーマンス)コアは、再びCortex-A710ベースで、以前より2%高いクロックとなっている。そのため、7+ Gen 1は、激しいマルチスレッドのワークロードで大きな性能向上は望めそうもない。TSMCの4nmプロセスによる電力効率の向上は、この点でも一定の成果をもたらすはずだが、その成果の一部は、電力消費の多いCortex-X2をバッテリーライフの観点から実行可能にするために投資されている。
一方、7+ Gen 2には、より高速なAdreno GPUも組み込まれている。これまで数世代にわたってQualcommの統合GPUがそうであったように、同社は製品番号を付与しておらず、重要なアーキテクチャの詳細も開示していないため、共有できる詳細情報は限られている。機能概要によると、8 Gen 2の新しいGPUアーキテクチャを使用しているようには見えないので、Qualcommは既存のGPUの大型バージョンを組み込み、クロックスピードを向上させたと思われる。
いずれにせよ、この新しいSoCに期待されるGPU性能は大きい。Qualcommは、7 Gen 1と比較して2倍という大幅な性能向上を報告している。これらはフラッグシップクラスのSoCではないとはいえ、QualcommはSnapdragon 7シリーズを、特に中国でゲーム用スマートフォンに適していると位置づけており、GPU性能を高めたのも納得だろう。
Qualcommは、少なくとも「長時間の日常使用」ベースでは、7 Gen 1よりも電力効率が13%向上していることをアピールしている。TSMCの4nmプロセスへの切り替えは、昨年の8+ Gen 1部品で証明されたように、大きな省電力効果をもたらすものだ。同時に、Qualcommがそこから得られた利益のかなりの部分を全体的なパフォーマンスの向上に投資していることは明らかでもある。
Snapdragon 8 Gen 2とは異なり、7+ Gen 2はより高速なLPDDR5Xメモリのサポートを受けていないため、Snapdragon 7ファミリーでは現状維持の32ビット(デュアル16ビット)LPDDR5メモリコントローラを搭載する。この場合、メモリの速度はLPDDR5-6400までサポートされることになり、メモリ帯域幅は25.6GB/秒となる。
そして、性能が大きく向上したのはCPUとGPUブロックだけではない。QualcommのHexagon DSP/AIエンジンブロックも、GPUの性能向上に匹敵する大幅なパフォーマンスチューニングを受けている。Qualcommは技術的な詳細について軽く説明しているが、8 Gen 2の次世代Hexagonブロックの2大特徴であるINT4やマイクロタイリングなどの機能については言及されていないため、これは従来の7 Gen 1で使用されていたHexagonブロックの大幅強化版と思われる。
Snapdragon 8の技術のうち、Snapdragon 7に搭載されているのは、トリプル18ビットのSpectra ISPだ。7+ Gen 2の18ビットユニットは、前世代のプラットフォームで採用されていた14ビットユニットに代わって、三重露光計算HDRビデオキャプチャをサポートし、QualcommがMega Low Light機能と呼ぶ低照度撮影の改善ももたらす。その結果、7+ Gen 2は、ゼロシャッターラグ機能を使用した場合に高解像度で撮影できるようになり、更新されたGPUと組み合わせて、最大60fpsで4Kビデオを記録できるようになり、7 Gen 1の4K30制限を2倍にすることが可能だ。
最後に、QualcommのSnapdragon X62統合モデムが再登場する。昨年のSoCと同様に、これはミリ波 + サブ6 Release 16設計で、理論上の最大ダウンロード速度4.4Gbpsを達成することが出来る。しかし、今年の設計には、Snapdragon 7プラットフォームにとってもう一つの初となるデュアルSIMデュアルアクティブ(DSDA)サポートが加えられている。7+のGen 2のアクティブ無線は、5Gと4Gの通信をサポートしており、デュアルSIMユーザーはどちらの無線でも好きなネットワークを利用することが出来る。これは、これまでQualcommのSnapdragon 8プラットフォームに限定されていた、もう一つのプレミアム機能だ。
携帯電話以外の接続については、7+ Gen 2はFastConnect 6900無線システムを採用している。これは、以前の6700無線機よりも比較的控えめなアップデートで、Bluetoothのサポートをバージョン5.3に引き上げ、デュアルバンド同時(DBS)のサポートにより、2×2ストリームWi-Fi 6E無線機のピーク帯域幅を3.6Gbpsに増加させている。
Qualcommによると、Snapdragon 7+ Gen 2を搭載した端末は今月末に発売される予定で、RedmiとRealmeがこの新しいチップを搭載した端末をリリースする予定のOEMメーカーに名を連ねている。
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