Googleの親会社AlphabetからスピンアウトしたAIと量子コンピューティング企業のSandboxAQが、量子・計算化学のスタートアップGood Chemistryを買収する事が明らかになった。
情報筋がWSJに語ったところによると、現金と株式からなる7500万ドルの取引で、新薬や新素材の開発に革命をもたらす可能性のある技術を前進させる極めて重要な一歩となる。
2022年にGoogleの親会社Alphabetから誕生したSandboxAQは、分子シミュレーションを含む量子テクノロジーと商用利用のためのAIツールを専門としている。
Good Chemistryは、量子コンピューティング企業1QBitのスピンオフとして2021年にArman Zaribafiyanによって設立された。これまでに、Green Sands EquityやAccenture Venturesなどの投資家の支援を受けている。
SandboxAQ の製品担当副社長であるNadia Carlsten博士は次のように述べている。「Good Chemistry のソフトウェアと既存のパートナーシップにより、高度なシミュレーションおよび AI ツールの利点をより多くの顧客に提供する方法を急速に加速することができます。私たちの機能を組み合わせることで、SandboxAQ は、新薬や材料の合成などの影響力のあるユースケースを可能にする規模で高精度の化学シミュレーションを実現する、高度でスケーラブルなコンピューティング プラットフォームを提供します」。
Good Chemistryの買収は、SandboxAQの顧客基盤の拡大と量子人材プールの強化を目的としていると、WSJは報じている。Good ChemistryはDow Chemicalとの提携で知られ、量子技術と機械学習を活用して化学的性質の予測とシミュレーションを行っている。
Good ChemistryのCEOであるArman Zaribafiyan氏は、AIシミュレーション・プラットフォームの製品責任者としてSandboxAQに加わる。
買収の一環として、SandboxAQは、Good Chemistryのソフトウェアである QEMIST Cloud と Tangelo を、成長を続ける同社のエンタープライズ ソフトウェア ポートフォリオに統合する。
QEMIST Cloudは、SaaS ベースの堅牢な計算化学プラットフォームであり、古典および量子コンピューティングハードウェア上で高精度、高スループットの量子シミュレーションを実行できるように設計されている。このプラットフォームにより、顧客は新たなITインフラへの投資や量子コンピューティングの専門知識を必要とすることなく、量子化学の機能を活用することが可能となる。
Tangeloはオープンソースの量子コンピューティングSDKで、エンドツーエンドの化学ワークフローをサポートし、すべての主要な量子クラウドプロバイダーと量子ハードウェアデバイスで迅速な実験を可能にするTangeloは、分子データを処理し、複雑な化学問題を分解し、これらの問題を量子プログラムとして表現し、最先端のハードウェア上でプログラムを実行し、結果を後処理して所望の精度を得るためのツールを提供する。Tageloの特徴は、開発者コミュニティが成長し、詳細なドキュメントとコードがGitHubで公開されていることだ。
SandboxAQの最高経営責任者であるJack Hidary氏は、この力の組み合わせに大きな可能性を見出している。「力を合わせれば、より大きな規模と能力でこの市場に貢献できます」と彼はWSJに語った。
今回の買収は、SandboxAQにとっては2022年にサイバーセキュリティ企業Cryptosenseを買収して以来2件目のもので、先週金曜日に最終決定したと同紙は報じている。SandboxAQとGood Chemistryの両社は、量子コンピューティングのパワーを利用し、分子レベルで物質の挙動をシミュレートするように設計されたアルゴリズムを使用している。Hidary氏によれば、この能力は、創薬や材料開発における新しいAIアルゴリズムのトレーニングに不可欠だという。また、Zaribafiyan氏はこのアプローチの効率性を指摘し、物理的な試験の代わりに化学的挙動をシミュレーションすることで、新薬や新素材の開発を大幅にスピードアップし、コストを削減できる可能性を指摘した。
同紙によれば、こうしたサービスに対する需要の高まりが、今回の動きを後押ししたという。Hidary氏はWSJに対し、ヘルスケア、自動車、航空宇宙、再生可能エネルギーといった分野へのAIの影響が、これらの技術によって大きく形作られる未来があると語った。Green Sands Equityの創設者でGood Chemistryの初期投資家であるReema Khan氏は、元Google CEOのEric Schmidt氏やSalesforce CEOのMarc Benioff氏といった人物がSandboxAQを強力に支援していることを挙げ、この取引がGood Chemistryの技術を拡大する可能性があることを認めた。
AccentureのNext-Gen ComputeリードであるCarl Dukatz氏は、WSJの取材に対し、この合併は、特にアクティブ量子とAIのエコシステムにおいて、非常に有益な製品を生み出す可能性のある有望な組み合わせであるとの見方を示した。
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