OpenAIがAIチップ製造能力を高めるための莫大な投資を募っている事が伝えられるように、AIの進歩を人類が追求する限り、これまで以上に計算能力を必要とする流れは変わらないだろう。そうした中、世界の半導体ファウンドリーもAIチップ関連に力を入れており、Samsungもこの分野が成長の大きな原動力になると見ているようだ。
同社は先進的チップ開発を追求し、この分野で他社に先んじるため生産能力の拡大に注力している。そして今回、まだ見ぬ2nmプロセスでのAIチップ開発を推進するため、未公開のAI企業と大型契約を結んだ事が伝えられている。
Samsungは先日の決算説明会で、新しい2nm契約を発表したが、どの企業と契約しているかは明かさなかった。これは次世代契約をめぐる覇権争いでTSMCに追いつくためのSamsungの努力の一環だと、Liberty Times Netは指摘している。同レポートによれば、この注文にはAI用の2nmチップが含まれ、HBM3メモリと高度なパッケージングも含まれているとのことで、これはデータセンター向けの製品であり、クライアント向けのものではないようだ。同社は2025年に2nm SF2プロセスを立ち上げる予定で、3nm世代でも用いているゲート・オール・アラウンド(GAA)トランジスタ設計であるMBCFET(Multi-Bridge Channel Field Effect Transistor)を活用する。
Samsungは2nmノードに大きな期待を寄せており、第2世代の3nm GAA設計と比較して、同程度のクロック周波数で効率が25%向上すると報告されている。さらに、同じ電力レベルで効率が12%向上し、総ダイサイズが5%縮小すると予想されている。Samsungは以前、最初の2nmウェハーはスマートフォンをターゲットにすると表明していたため、今回の新たな契約は同社の最先端プロセスにとって初のPC関連契約となる可能性がある。Techpowerupは、この契約はGoogle、Microsoft、Alibabaのようなハイパースケールデータセンター企業向けだろうと推測している。
Samsungの契約のニュースは、2nmチップとそれ以降のチップをめぐる戦いの激化を意味する。Samsungは、2nmの戦場で業界トップのTSMCと真っ向から対決することを望んでいるようだ。Samsungは2022年には他社に先駆けて3nmプロセスを開発した。ただし、これはTSMCがiPhoneやMac向けに昨年製造した3nmチップほどには収益を上げていないとみられる。そしてTSMCも次世代iPhoneやMシリーズSoC向けに2nmチップを提供することについて、すでにAppleと交渉していると報じられており、Apple製品に採用されるというその規模を考えると、Samsungにとっては分の悪い戦いにも映る。IntelもArrow Lakeを搭載したIntel 20Aを今年発表する予定だ。それが実現すれば、SamsungとTSMCの両社を抑えて最初の2nm製品を市場に投入することになる。
Samsungは、TSMCやIntelからビジネスを引き離すために、2nmウェハーのディスカウントを検討しているとも噂されている。おそらくその戦略は今回の取引ですでに実を結んだのだろうが、それは我々の憶測に過ぎない。いずれにせよ、どのファウンドリーが最も多くの顧客を自社の2nmプロセスに誘致できるかという競争が正式に始まり、数年ぶりに血みどろの三つ巴の戦いになりそうだ。
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