DDR5メモリが一般向けに登場してまだ数ヶ月だが、Samsungはすでに先を見据え、次世代メモリであるDDR6の開発初期段階に入っているという。
MSAPにより微細化、最大17,000Mbpsの転送速度を実現
Samsungの Test and System Package 担当副社長は、韓国・水原で開催されたセミナーで、今後メモリ自体の性能が拡大するのに伴い、パッケージ技術の進化が求められていることを明らかにした。すでに、MSAPを活用した次世代DDR6メモリの開発初期段階であることを確認した。
MSAP(Modified Semi-AdditiveProcess)とは、電子回路基板の回路形成方法の1つである。電子回路基板の回路形成方法では、サブトラクティブ法と、Semi-Additive Process(以下、SAP)が一般的に用いられている。
サブトラクティブ法は基板全体の銅箔などの導体をエッチングで非回路部のみ除去し回路を形成する方法であり、硫酸銅メッキ後に回路部にドライフィルムパターンを形成し、ドライフィルムをエッチングレジストとするテンティング法と、非回路部にドライフィルムパターンを形成し、スズメッキなどをエッチングレジストとするパターンメッキ法(メタルレジスト法)がある。
一方SAPは、絶縁材料上に無電解銅メッキを施してシード層を形成し、非回路部にドライフィルムパターンを形成させて、シード層の露出した部分のみを電解銅メッキで配線形成する方法である。
MSAPはSAPと同様な工法であるが、シード層に極薄銅箔を使用するために、比較的容易に信頼性の高い微細配線を形成することが可能となる。これにより、従来は手付かずだった空いたスペースに回路パターンをコーティングすることで、より改善された接続と高速な転送速度を実現することができる。
Samsungによれば、MSAPは競合他社(SK HynixとMicron)がDDR5ですでに採用しているという。次世代DDR6メモリでは、MSAPを活用して回路の接続性を高めるだけでなく、DDR6メモリに搭載される層数の増加に対応する予定だ。
従来のテンティング法では、円形の銅板の回路パターンが形成される部分のみをコーティングし、それ以外の部分はエッチングで削っていました。
しかし、MSAPでは、回路以外の部分をコーティングし、空いた部分にメッキを施すことで、より微細な回路を形成することができる。メモリチップの容量やデータ処理速度が上がると、それに合わせたパッケージの設計が必要になると副社長は言う。層数の増加やプロセスの高度化に伴い、メモリパッケージの市場も飛躍的に成長することが予想される、とKo氏は語った。
ファンアウト(I/O端子をチップの外側に配置し、ボールレイアウトを維持しながらチップの小型化を可能にするもう一つのパッケージ技術)については、Samsungはファンアウトウエハーレベルパッケージ(FO-WLP)とファンアウトパネルレベルパッケージ(FO-PLP)の両方を適用していた。
The Elec
Samsungは、DDR6の設計は2024年までに確定するが、商業利用は2025年以降になると予想している。スペック的には、DDR6メモリは既存のDDR5メモリの最大2倍の速度となり、転送速度は最大12,800Mbps(JEDEC)、オーバークロックでは17,000Mbps台まで高速化される予定だ。現在、Samsungの最速DDR5 DIMMの転送速度は最大7,200 Mbpsなので、次世代メモリチップではJEDECで1.7倍、オーバークロックで2.36倍向上していることになる。
とはいえ、DDR6メモリが登場するのはまだまだ先の話だ。当面は、登場したばかりのDDR5メモリを最大限に活かしてくれる新しいAMDのZen 4やIntelのRaptor Lake CPUの登場によりゲームパフォーマンスなどがどの程度変わってくるのか楽しみだ。
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