英国のRolls-Royceが、従来のジェット燃料の代わりに、水素を使って最新の航空機用エンジンを動かすことに、航空業界として世界で初めて成功したことを発表した。これは、航空業界のカーボンニュートラル化に向けた有望な第一歩として、同社とeasyJetが主導するプロジェクトである。
ジャンボジェットはバッテリーで飛ばせない
実験は、英国国防省ボスコム・ダウンの試験場で行われた。プロトタイプに使われたエンジンは、一般的に使用されているRolls-Royce社の地域用航空機エンジンAE-2100Aである。このタービンに、英国オークニー諸島にある欧州海洋エネルギーセンターで水を分解して作った「グリーン」な水素が供給された。
Rolls-Royce社の最高技術責任者であるGrazia Vittadini(グラツィア・ヴィッタディーニ)氏は、「私たちは、水素のゼロ・カーボンの可能性を発見するために限界に挑戦しており、それは飛行の未来を形作るのに役立つかもしれません」と述べている。
航空機用燃料を水素に代替することには大きな意味がある。Air Transport Action Groupによると、航空業界は、すべての輸送機関からの二酸化炭素排出量の約12パーセントを担っていると推定されているのだ。
航空業界でも、バッテリー式電動飛行機の開発が盛んに行われているが、短距離ならばいざ知らず、太平洋・大西洋を越えるような長距離の飛行や、何百人もの旅客を乗せて飛ぶような大型の航空機の飛行に必要なエネルギーをバッテリーによって賄うと言うことは現実的ではない。easyJetの最高執行責任者であるDavid Morgan(デビッド・モーガン)氏はBBC Newsに、「我々はバッテリー技術を検討したが、我々が飛行する大型民間航空機にはバッテリー技術はおそらく無理であることは明らかだった」と語っている。
そこで、化石燃料に代わる可能性のあるものとして、水素が注目されているのだ。Rolls-Royce社の航空宇宙技術部長であるAlan Newby(アラン・ニュービー)氏はBBC Newsに、「水素のような燃料の優れた点は、炭素を含まないため、燃焼してもCO2を発生させないことです」と語っている。
水素利用の実現性
超低温(-253℃)で貯蔵し、ガス状にして点火する必要があるため、航空機への搭載は非常に困難であり、この実験の実用化には長い時間がかかると思われる。
また、液体水素燃料は従来の航空燃料に比べて4倍近い体積を占めると推定されており、航空会社はこれらの要件を満たすために航空機の構造を全面的に見直す必要がある。
Rolls-RoyceとeasyJetの両社は、「Rolls-Royce Pearl 15ジェットエンジンの本格的な地上試験につながる一連のさらなるリグ試験」を完了させるために、パートナーシップを継続する予定だ。これらの試験は、将来的な飛行試験への足がかりとなる。
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