核融合技術を開発するフランスのスタートアップ「Renaissance Fusion」は、米国の気候技術VCであるLowercarbon Capitalが主導する1,500万ユーロ(約22億円)のシードラウンドを非公開の評価額で調達した。
核融合は、地上に太陽を作り出し、人類のエネルギー問題を解決する夢のエネルギー源と言われている。
昨年12月、アメリカの研究者たちは、初めて核融合反応に必要なエネルギー以上のエネルギーを作り出すことができたと発表した。
2020年に設立されたRenaissance Fusion社は、現在、核融合炉に使用できる部品の開発に注力している。
ひとつは液体金属で、核融合反応室の内壁に付着し、極度の熱や放射能から壁を絶縁し、メンテナンスコストを下げる。
また、高温超電導コイルも製造している。このコイルは強力な磁場を発生させ、小型の原子炉でも大型の原子炉と同じ性能を発揮することができる。
今回の資金調達で、Renaissance Fusionの従業員は3倍の60人になる。また、研究開発を促進するために必要な機器を購入し、技術の商業化に向けた最初の実験を行う予定だ。
Renaissance Fusionは、現在、収益前であり、2024年末に両技術の販売を開始する予定である。しかし、興味深いことに、核融合市場向けではない。
ごくわずかな改良を加えれば、医療用画像診断やエネルギー貯蔵など、強い磁場を必要とする他の産業にも応用できると、創業者のFrancesco Volpe氏は言う。
実際に核融合発電所が実用化されるには、まだまだ歳月がかかるため、その前に、会社が収益を上げられるようにするための方法なのだ。
今回の投資には、Lowercarbon Capitalのほか、HCVC、Positron Ventures、Norrskenなど、欧州の投資家が参加している。
「Francesco Volpeと彼のチームが、フランスと欧州において、エネルギー生産・配給技術における破壊的なソリューションを生み出し、産業化することを支援できることを光栄に思います。グルノーブルは、原子力エネルギーの開発に有利な環境、CEAのような強力なエコシステム、比類のない人材プールから恩恵を受けることができる非常に戦略的な場所です」と、HCVCの創設者で代表パートナーのAlexis Houssouは声明で述べている。
Renaissance Fusionは、現在核融合実験の多くに使われているトカマク型ではなく、ヘリカル型の一種ステラレータ型に取り組んでいる。2030年代には1GWの小型核融合炉を出荷できる見込みとのことだ。ただ、前途多難であることを同社は十分承知している。同社は、発電所を直接運営することはなく、その代わり、発電所の建設会社や運営会社に原子炉を販売する。
Volpe氏は、「私たちは非常にユニークな技術を持っています」とTechCrunchに語っている。「磁場を発生させるために複雑な三次元コイルを設計する代わりに、我が社は円筒にトラックを描くことでこのプロセスを大幅に簡素化したのです。」
発生させたい磁場をもとにある程度計算した上で、必要なコイルの形状を決定することができる。円筒は軸を中心に回転しながら、装置が左右に動いて円筒の表面にレーザーで軌跡を刻むのだという。
そして、シリンダーブロックが組み合わされてリアクターが形成される。このモジュール化は、出荷やロジスティクスの際に役立つはずだ。シリンダー内の核反応で発生する中性子については、Renaissance Fusionでは、液体リチウムを使って厚い壁を作り、プラズマと外界を分離したいと考えている。
「液体金属の層を注入し、円筒の内側を流れ、底で取り出します。中性子の大部分を吸収するのに十分な厚さです」と、Volope氏は述べている。
この液体金属は、ステラレータから熱を取り出すのにも使われる。この熱で蒸気を発生させ、タービンを回して発電することができる。
Volpe氏によると、液体金属を使うことが革新に繋がっているようだ。「商業的な核融合で、液体リチウムがプラズマに面しているのはわれわれだけだ」と、Volpe氏は胸を張る。
今のところ、同社は厚さ1cmの液体リチウムベースの壁を作ることができる。Renaissance Fusionでは、30〜40センチメートルの厚さが必要と推定しており、核融合に使用できるようになるまでには、多くの繰り返しが必要になるだろう。
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