その実現可能性が疑問視されていた人工衛星用電気推進システム「量子ドライブ」を搭載したIVO Limited社の人工衛星が、SpaceX社のロケットに搭載されて宇宙に打ち上げられ、起動に成功したことが、IVOからのThe Debriefに向けて送られたEメールから明らかになった。
「打ち上げと配備は成功しました!衛星の『ハートビート』を受信しています。次のステップは衛星との通信を確立することです」と、IVOのオーナーであり創設者であるRichard Mansell氏は述べている。
既知の物理法則に反する
量子ドライブは、ニュートンの運動法則に反するとされている。特に、ニュートンの第一法則は、物体は外力が作用しない限り、一定の速度で直線運動を続けると定義しているが、このドライブはその概念に挑戦しているとのことだ。Mansell氏は、このドライブのテストと実用化に向けて、プリマス大学のMike McCulloch教授の「量子化慣性(QI)」理論に基づいて作業を進めている。
McCulloch教授の唱える量子化慣性(QI)とは、2007年に初めて提唱された慣性の理論である。この理論は、一般相対性理論と量子場理論を調和させ、ダークマターを必要としない方法で銀河の回転曲線を説明しようとするものだ。
McCulloch教授はこの理論が、燃料なしで宇宙船を打ち上げるための基礎を提供できると主張していた。McCulloch氏らはDARPAの助成金を得て、実験室でQIを調査する実験を行うようになっていた。今回、IVO量子ドライブの打ち上げにより、この理論の正当性が初めて宇宙で検証されることになるのだ。
既にMansell氏は、IVOのノースダコタ本社と、バージニアの施設で、QI理論に基づく量子ドライブをテストし、改良していった。IVOでは100時間を超える模擬宇宙環境でのプロトタイプのテストが行われ、推力を生み出すモデルが完成した。さらにチームは最近、1000時間に及ぶ「ストレステスト」を成功させ、量子ドライブは見事に合格したとのことだ。
IVOの話では、現代の物理法則では機能しないはずの量子ドライブは、実験室のテストでは予測通りの推力を生み出していたようだ。
このプロジェクトの最終目標は、量子ドライブがバリー1号衛星の軌道を変更することに成功し、物理学の教科書を書き換えるか、あるいは失敗し、ニュートンの法則が再び確認されることである。
Mansell氏は物議を醸したドライブの実地テストに到達したチームの努力を誇りに思うと述べている。彼はまた、このビジネスでは、理論が終わり、実用的なテストが引き継がれなければならない時が来るとも述べている。
「IVOはどのような分野においても常に限界に挑戦しており、宇宙も例外ではありません。「私たちは難しい実験に挑戦することを恐れません。なぜなら、これこそが科学技術を大きく飛躍させる方法だからです。 憶測や仮説に頼るのではなく、実際に確かなデータを得ることが不可欠です。 これが、私たちが量子ドライブを宇宙に送り出した理由です」。
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