MicrosoftのOpenAIとの複数年、数十億ドル規模のパートナーシップは、新しいものではない。両社の関係は、2019年にMicrosoftがOpenAIに対して10億ドルの出資を行った事から始まる。
表面的には、Bill Gates氏が以前語ったように、両社の関係はすべてが素晴らしいように見える。しかし、The Wall Street Journal(WSJ)の新しいレポートによると、2社の間には緊張感が漂っており、それが2社のパートナーシップを “厄介なもの”にしているとのことだ。
MicrosoftはOpenAIの懸念を聞き入れなかった
WSJはこの問題に詳しい人物の話として、OpenAIがMicrosoftが企てているChatGPTとBingとの統合に関して、もっと訓練が必要だと警告していたことを明らかにした。OpenAIの最大の懸念は、BingのチャットボットであるSydneyが幻覚を見て動揺した反応を示すかもしれないということだったが、まさにその通りになってしまったわけだ。
だがこれらの警告は、Microsoftによって無視されたと伝えられている。
WSJの報道では、Microsoftの内部関係者が、同社が自社のAIプロジェクトに行う投資が限定的であることについて懸念を表明しているとも述べている。Microsoftのスタッフが懸念しているもう一つの点は、OpenAIが自分たちの技術の基礎となるメカニズムに誰もアクセスできないように制限を設けていることだ。
MicrosoftとOpenAIの営業チームは、同じ顧客を求めており、このことも両者の摩擦の原因となっている。
両社はAI競争のライバルである
BingとChatGPTは、BingがChatGPT-4上で動作しているとはいえ、ライバルであることは否定しない。しかし、両社の最大の違いは、Bingがインターネット全体にアクセスできるのに対し、ChatGPTは学習させた限られたデータに基づいてしか情報を出せないことだ。
しかし、それでもChatGPTは、サービス開始から4ヶ月後の2月に1億人を超えるユーザーを獲得し、競争に勝利したようだ。ChatGPTがTikTokを抜いて最も急成長したアプリとなったことで、Microsoftの社員はChatGPTがBingの「雷」を盗んでいるのではないかという懸念を示したとWSJは報じている。このことも、MicrosoftがBingの展開を急いだ理由のひとつだったのかもしれない。
どちらも幻覚を見るAIチャットボットを搭載
Microsoftはこの問題にどのように取り組んでいるのか、という質問を受けたMicrosoft CEOのSatya Nadella氏は、「幻覚を軽減する非常に実用的なものがある。そして、その技術は確実に向上している。解決策も出てくるはずです。しかし、幻覚は時に『創造性』でもあります。人間は、いつどのモードを使うかを選択できるようにすべきです」と、述べている。
AI、さらに言えば人工知能(AGI)の可能性に懸念が高まる中、両社はガードレールの必要性に取り組んでいる。
OpenAIのCEOであるSam Altman氏は、ブログの中で「現在の状況を考えると、今後10年以内に、AIシステムがほとんどの領域で専門家のスキルレベルを超え、今日の大企業と同等の生産活動を行うことが考えられる」と述べている。Altman氏は、原子力の例を挙げ、国際原子力機関(IAEA)のようなAIの管理機関がすぐに必要になるだろうと述べた。
一方、Nadella氏はAGIが現れることを心配していないとし、「これが人類最後の発明だとしたら、万事休すだ。それが何なのか、いつなのか、人によって判断が分かれるだろう。しかし、それに対して政府がどう答えるか。だから、それはちょっと脇に置いておきます。これは、超知能が存在する場合にのみ起こることなのです」。
Source
- The Wall Street Journal: The Awkward Partnership Leading the AI Boom
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