NVIDIAは中国市場を諦めておらず、米国の規制をくぐり抜けて、何とか自社製品を中国に販売したいと考えているようだ。Financial Timesが入手した内部文書とこの件に詳しい4人の関係者の話によると、同社は中国市場向けに3つの新しく「H20、L20、L2」チップを開発したという。これらは、米国の輸出規制を遵守しつつ、中国の人工知能需要の高まりに対応するよう設計されている。
NVIDIAが米国の新たな規制のために中国顧客向けに自社製品を独自にアレンジしたのはこの1年あまりで2度目である。丁度1年前、米国政府がA100とH100 GPUの中国向け輸出に規制を敷いたため、同社は中国市場向けにA800とH800という新たに性能を意図的に落としたチップを開発したことが明らかになっていた。
先月、米国政府はより厳しい輸出規制を導入した。これはNVIDIAのA800とH800を規制し、抜け穴を塞ぐ物だった。そしてこの更なる規制に対応する為、NVIDIAは新たなチップを開発したというわけだ。
FTの情報筋によれば、NVIDIAの中国向け新GPUの性能は、以前中国で販売されていたNVIDIAのH800やA800チップに比べれば性能が低下しているが、それでも中国市場では競争力があるはずだという。
チップ・コンサルタント会社SemiAnalysisのアナリストは、NVIDIAの新チップはピーク性能と電力密度のバランスが完璧で、米国の新規制を乗り切ることができると顧客向けメモに書いている。
NVIDIAはこの報道についてまだコメントを出していない。同社は今年、AIの宣伝で株価が急騰し、AIモデルの訓練と実行を行うほぼすべての新しいコンピュータクラスタの主要サプライヤーとなっている。
中国からの大量注文はNVIDIAの売上成長の原動力であるため、米国企業は政治的な懸念にもかかわらず中国への供給を続けることを続ける事に多大な努力を払っている。
今のところ、NVIDIAは中国やその他の地域で真剣な競争相手を持っていない。開発ツール、ソフトウェアの革新、そしてハードウェアの巧みな組み合わせによって、NVIDIAは単なるチップ・サプライヤーの域を超えた役割を担っており、他社に簡単に追いつかれることはないだろう。
中国のチップメーカーにとってさらに複雑なのは、政府の規制により中国国内でのみチップを生産する必要があるが、オランダのASML社などのサプライヤーから高度なチップ生産設備を利用できないことだ。これに対応する為、中国ではEUVリソグラフィ装置に代わる粒子加速器を備えたリソグラフィ装置を開発する動きも加速している。
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