量子コンピュータの世界では、新たなエラー訂正技術が開発され、その中心には「非アーベル型エニオン」という新種の量子エンティティと、数学の一分野である「トポロジー(形状の性質を扱う数学の一分野)」が存在している。
量子ビットの脆弱性とエラー訂正
量子ビット、通称qubitは、熱やランダムノイズによって常に影響を受ける非常に繊細な存在です。さらに、qubitは通常、量子力学的に互いに結びついているため、一つや二つが機能しなくなると、システム全体に影響を及ぼす。このため、量子コンピュータにはエラー訂正システムが必要不可欠となる。エラー訂正システムは、qubitの脆弱性を補うために開発され、量子コンピュータの信頼性と効率を向上させる役割を果たす。
非アーベル型エニオンの登場
この問題を解決するために、GoogleのQuantum AI部門とQuantinuumというスタートアップが、非アーベル型エニオンという新しい量子エンティティを用いた新たなエラー訂正技術を開発しており、発見権を争っている。非アーベル型エニオンは二次元空間に存在し、量子物理学の法則により、電子や光子のような完全に交換可能な粒子とは異なり、互いに区別可能な軌道を描くことが出来る。これにより、互いに結びつきながらも複雑な結び目やねじれを形成することが可能となる。これらの特性は、非アーベル型エニオンを量子エラー訂正の新たな手段として利用可能にする。
トポロジカル量子計算の可能性
この新種の準粒子の魅力的な特徴は、量子論理演算へのアクセシビリティと、熱や環境ノイズに対する相対的な耐性の組み合わせだ。これは、トポロジカル量子計算の提案者であるロシア生まれの物理学者Alexei Kitaevが1997年に認識していたものだ。Kitaevは当時、非アーベル型エニオンが任意の量子コンピュータアルゴリズムを実行できることを認識した。これは、非アーベル型エニオンが量子計算の新たなパラダイムを開く可能性を示している。
量子コンピュータの新たな形状
QuantinuumのH2量子コンピュータチップは、電磁トラップ内の個々のイッテルビウムイオンから成る32のqubitを特徴としている。これらのイオンは、非アーベル型エニオンを生成するための環境を作り出すために、qubitのエンタングルメントを利用する。
一方、Google Quantum AIチームは、ジョセフソン接合やインダクタ、コンデンサなどの回路要素から成る超伝導qubitを中心に構築した量子コンピュータで非アーベル型エニオンを発見した。Googleのqubitは、基本的にはインダクタ-コンデンサの振動子で、ジョセフソン接合を用いて作られている。これらを冷却すると、振動子の量子化されたレベルが観測でき、これらのレベルがqubitの0と1の状態として使用される。
量子コンピュータの未来
これらの研究は、量子コンピュータのエラー訂正という重要な問題に対する新たな解決策を示している。非アーベル型エニオンとトポロジーを用いた新たなエラー訂正技術は、量子コンピュータの実用化に向けた大きな一歩となる可能性がある。
Source
- IEEE Spectrum: Qubit Quest Takes a Topological Turn
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