Elon Musk氏のBCI企業Neuralinkは、1月下旬に同社初の人体への脳インプラント移植手術を実施したがあれから3週間、Elon Musk氏はこの患者が施行だけでコンピュータのマウスカーソルを操作することに成功し、新たなマイルストーンを達成したことを報告している。
X上のMusk氏のスペースで同氏は、「経過は良好で、患者は完全に回復したようで、我々の知る限りでは何の悪影響もない。患者は考えるだけで、マウスを画面上で動かすことができる」と、報告している。
Neuralinkは、そのPRIME(Precise Robotically IMplanted Brain-Computer InterfacE)研究を通じて、麻痺のあるユーザーが自分の思考だけで機器を操作できるようにすることを目指す、埋め込み型ワイヤレス脳コンピューター・インターフェース(Brain Computer Interface: BCI)の試験を目指している。
Neuralink社のN1チップは患者の頭蓋骨に埋め込まれ、人間の髪の毛よりも細い小さな糸で脳に接続される。糸には1024個の電極があり、同時に信号を拾って何百万もの脳神経細胞を刺激することができる。信号は処理と解釈のために無線で転送される。
BCI自体は新しいアイデアではない。特に、新興企業のSynchronは2021年、低侵襲手術の代わりに血管に挿入することで、複雑な脳手術という厄介な問題を回避する同様の装置を試験するための食品医薬品局(FDA)の承認を獲得し、Neuralinkに先んじた。
このNeuralinkは昨年5月、米国食品医薬品局(FDA)から最初のヒト臨床試験開始の承認を受けていた。しかし、Natureが報じているように、この試験は国立衛生研究所のオンラインリポジトリに登録されていないようだ。これは、試験結果が出版される前に医学雑誌によって課されることが多い要件である。
他のBCIアプローチも存在するが、Neuralinkのものは、個々のニューロンからの入力を記録する最初のワイヤレスモデルであるという点で際立っている。インプラントを外部のコンピューターに接続する必要性をなくすことで、潜在的な感染源を取り除き、ユーザーは機器に縛られることなく日常生活を送ることができる。
このようなインターフェイスは、病気や怪我によって生活に深刻な影響を受けている患者に大きな利益をもたらすことができる。単に麻痺した患者が歩けるようになるだけでなく、視力を回復させたり、あるいは思考によって電子機器を制御するなど、人間の総合的な能力を向上させることもできるのだ。
今日、ヒトを対象とした臨床試験が進展しているように見えるが、この分野の他の研究者や、この技術から恩恵を受ける可能性のある患者を代表する団体は、透明性の欠如に不満を表明している。
人体での治験が始まった今、ボランティアの安全と幸福は差し迫った問題だ。Neuralinkは知見の目標についてほとんど情報を公開しておらず、Natureの取材要請にも応じていない。研究者の中には、成果を評価しつつも、既存のデバイスで問題になっている、検出された神経細胞信号の質が時間とともに低下するかどうか、長期的な影響を確認したくてもNeuralinkの臨床試験が公的なリポジトリに登録さえされていない現状では、何も進める事は出来ない。
オックスフォード大学の神経工学者であるTim DenisonがNature誌は「私の推測では、FDAとNeuralinkは、ある程度は戦略に従っていると思います。しかし、我々はプロトコルを知らない。ですから、それはわかりません」と、述べている。
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