NASAとアカデミアのエンジニアの共同研究がこのほど、カーマン・ラインとしても知られる宇宙との境界付近でハイブリッド・プリント電子回路のテストを行った。この宇宙準備テストは、4月25日にNASAのワロップス飛行施設から打ち上げられたサブオービタル技術実験キャリア-9(SubTEC-9)観測ロケットミッションで実証された。
テストは湿度センサーと電子センサーで構成され、ペイロードドアとともに2枚のパネルにプリントされた。このミッションは成功とみなされ、科学者やエンジニアが小型宇宙船の設計効率を向上させるのに役立つ可能性を秘めている。
NASAゴダード宇宙飛行センターのエレクトロニクス・エンジニアであり、ゴダードの航空宇宙エンジニアであるBeth Paquette氏と共同で実験を指揮したMargaret Samuels博士は、「この技術のユニークさは、必要な場所に実際にセンサーをプリントできることです。大きな利点は、スペースを節約できることです。私たちは、3次元の表面に、髪の毛の半分の幅である約30ミクロン、あるいはそれ以下の部品間の痕跡で印刷することができます。この技術は、アンテナや無線周波数アプリケーションにも有効です」と、語った。
湿度を感知する印刷インクはNASAのマーシャル宇宙飛行センターで製造され、回路はメリーランド大学の物理科学研究所(LPS)で作成された。彼らはそれぞれ、Samuels博士やPaquette博士と協調し、このプロジェクトに協力した。
ワロップスのエレクトロニクス・エンジニアであるBrian Banks氏は、プリント回路は、地球近傍と深宇宙ミッションの両方で、より小型の宇宙船を設計するための新しい枠組みを提供すると指摘した。
「ハイブリッド技術によって、従来の電子機器モジュールでは通常利用できないような場所でも回路を作製することができます。曲面への印刷は、スペースが非常に限られている小型の配備可能なサブペイロードにも役立つ可能性があります」と、Banks氏は語る。
SubTEC-9ミッションは、LPSにおけるプリント回路技術の進化と検証の “転換点”を確立するものである。
Paquette氏によれば、将来のミッションでは、温度センサーを機体の表面内部全体にプリントすることも可能だという。例えば、そのようなミッションでは、宇宙船が太陽の近くを移動する際の加熱と冷却を分析することができる。
SubTEC-9ミッションでは、3Dプリントされた電子回路のテストとともに、合計14種類の技術をテストした。これらには、より高速なテレメトリ・リンク、新しいアンテナ、低コストのジャイロ、新しい高密度バッテリー、そして新しい小型のスター・トラッカーが含まれる。スター・トラッカーは、その名の通り、星のような宇宙空間で重要な物体の位置を合わせるために作られたセンサーで、高度制御システム用に作られている。
SubTECミッションは、NASAのサウンディングロケット計画(NSRP)のほんの一部に過ぎない。NSRPは、宇宙科学と地球科学の研究活動を提供することを目的として1959年に始まった。NSRPはその在任期間中、約3,000件のサブオービタル宇宙へのミッションを打ち上げ、97%の打ち上げ成功率とともに、過去20年間で90%以上のミッション成功率を達成している。
SubTEC-9観測ロケットミッションは、NASAのSubTECプログラムの中で最も新しいもので、その最初の打ち上げは2005年で、最近のフライトには2017年5月16日に行われたSubTEC-7と2019年10月24日に行われたSubTEC-8がある。
今後数年、数十年の間に、科学者やエンジニアは3Dプリント電子回路についてどのような新しい発見をするのだろうか?時が経たなければわからない。だからこそ我々は科学するのだ!
この記事は、LAURENCE TOGNETTI氏によって執筆され、Universe Todayに掲載されたものを、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(表示4.0 国際)に則り、翻訳・転載したものです。元記事はこちらからお読み頂けます。
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