NASAは、月探査計画「アルテミス計画」の第1弾となる、アルテミス1号ロケットについて、先日のハリケーンNicoleの直撃による被害を調査した結果、問題ないと判断し、ロケットの打ち上げを当初の予定通り11月16日午後3時4分(日本時間)とする事を発表した。
「今現在、16日の予定を妨げるものは何もない」と、NASAで探査システムの開発を率いるエンジニアのJim Free(ジム・フリー)氏は述べている。このアルテミス1号ミッションは、この10年後の有人ミッションである「アルテミス3号」に備えるもので、乗組員のいない状態での宇宙船オリオンを月周辺に送り、高い負荷をかけてテストするものである。
Free氏によると、ハリケーンNicoleはフロリダのケネディ宇宙センター上空で強風を発生させたが、ロケットが設計上の限界を超える突風にさらされたことは一度もなかったとのことだ。実際に、米国国立気象局によると、、ロケットの発射台の高度200フィート(約1.6m)で最大風速93mphを記録したと報告されているが、ロケットの耐風限界である97mphを上回るものではない。(SLSの設計仕様全文はこちら)
ハリケーンが去った後のロケットの予備検査では、ごく小さな問題が見つかっただけで、そのほとんどは対処済とのことだ。
ただし、NASAは木曜日にロケットがハリケーンの猛威にさらされる事に対して、投げやりに放置したわけではない。ロケットのエンジニアリングチームは、ハリケーン上陸前に、その規模や脅威、そしてそれがSLSに及ぼす影響について長いミーティングを行った。結局の所、車両組み立て棟(VAB)に戻すよりも、発射台に留まらせる方が安全であるとの判断から、今回のような対応になったとのことだ。
「私たちの見解では、ハリケーンの風は想定の範囲内にとどまりました。私たち全員にとって、外に留まりたくなかったのは明らかでしょう。このような場合、車両にとって最適な場所はVABです。しかし、VABに戻っても安全とは言えません。だから、私たちはその場に留まり、予測と認証の限界によって嵐から守られたのです」と、Free氏は述べている。
NASAはロケットの外装を検査したが、ロケットの内部の構造的な完全性、例えばファスナーや摩耗や疲労が起こりやすい素材などを調査することはなさそうだ。Free氏によると、NASAのエンジニアは、ロケットの風荷重が設計仕様を超えていないことに自信を持っており、それは約1年前に行われたロケットの振動試験(モード試験)で確認されたことだとのことだ。
11月16日の現地時間朝は、天気も良好との予報が出ている。技術的な問題で打ち上げが不可能な場合以外は、打ち上げが行われる可能性が高い。だが、何らかの問題で延期された場合は、NASAには11月19日に打ち上げる予定も残っている。そして、11月最後の打ち上げ機会は、11月25日だ。
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