最初の頃、宇宙はとても熱く、とても密度が高かったため、光は遠くまで飛ぶことができなかった。光子は、最も明るい星の中心部にある光子のように素早く放出、散乱、吸収された。しかし、やがて宇宙は膨張し、冷却されて透明になり、ビッグバンの誕生光は何十億年もの間、時空を横断することができるようになった。私たちはそれを宇宙マイクロ波背景放射として今も見ている。宇宙が膨張するにつれて、水素とヘリウムの暖かい雲だけで満たされた暗い宇宙になっていった。やがてそれらの雲が崩壊して最初の星が形成され、再び光が天空を満たした。
私たちが今日見ている星は、どれも最初の星の中には含まれていない。現代の星は、炭素や鉄などの元素を豊富に含んでいる。より重い元素は、恒星のコアやその他の天体物理学的プロセスで形成されるだけだ。最初の星は水素とヘリウムだけでできていた。超新星爆発を起こし、はかない一生を終えた。その残骸だけが残っている。このような最初の星を探すために、何度か深宇宙探査が行われたが、今のところ見つかっていない。はるか彼方の宇宙にその痕跡を示す間接的な証拠はあるが、まだその光を見たことはない。このたび、ナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡がその滅びゆく輝きをとらえるかもしれないという新しい研究が発表された。
正式名称は広視野赤外線サーベイ望遠鏡(WFIRST)で、ローマン宇宙望遠鏡は2026年後半に打ち上げられる予定だ。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)と同様、赤外線で宇宙を観測するが、ローマン宇宙望遠鏡はより広い視野を持つ。これにより、最初の星の赤方偏移の強い光を見つけることができる。しかし、最初の星の寿命が短いことを考えると、ローマンが直接観測することはないだろうと著者らは指摘している。その代わりに、ブラックホールに飲み込まれた星の証拠を探すことを提案している。
具体的には、潮汐崩壊現象(TDE)と呼ばれるものを探すことを提案している。星がブラックホールの近くを通過すると、ブラックホールの重力潮汐力によって星が引き裂かれる。その結果、星の残骸が大きな弧を描いて散らばる。この過程には時間がかかり、加熱されたガスの流れができる。著者らは、このガスの発光スペクトルを第一世代の星についてモデル化し、かなりの時間続く独特のシグネチャーを持つことを発見した。このようなTDEからの光の多くは強い紫外線で放出されるが、z = 10程度の宇宙赤方偏移で発生するため、われわれが目にする光は赤外線にシフトし、JWSTやローマン宇宙望遠鏡で観測可能となる。
著者らは、第一世代の星でTDEが発生する速度はいくつかの要因に左右されるが、合理的な見積もりをすれば、ローマン宇宙望遠鏡は年に数十個のTDEを観測できると予想している。つまり、あと数年で、ついに第一世代の星の最後の光をとらえることができるかもしれないのだ。
この記事は、BRIAN KOBERLEIN氏によって執筆され、Universe Todayに掲載されたものを、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(表示4.0 国際)に則り、翻訳・転載したものです。元記事はこちらからお読み頂けます。
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