音楽は人類にとって偉大な文化遺産の一つだ。バッハやモーツァルト、ビートルズにプレスリーなど、人類の偉大な足跡を後世に伝えていきたいものだが、最終戦争や何らかの大規模自然災害などで人類の文明が崩壊寸前まで追い込まれたときに、数千年後の我々の子孫に偉大な音楽の数々を残すにはどうすれば良いか。Microsoftとノルウェー政府の共同プロジェクト「Project Silica」によって、一つの答えが示されようとしている。
Global Music Vaultと呼ばれるこのアイデアは、文明が崩壊した場合に備えて、我々の文化を未来に向けて保存するものだ。数百年、果ては数千年もの長期間に耐えられるような記録デバイスとしては、CDやMP3が詰まったフラッシュドライブでは不十分だ。このプロジェクトでは、Microsoftの「Project Silica」を採用し、何千年もの寿命を持つ石英ガラス製のプラッターにデータを保存している。
この音楽データの保存は、スヴァールバル世界種子貯蔵庫と並行したプロジェクトとなる。スヴァールバル世界種子貯蔵庫では、何らかの理由で農業の再建が必要になった場合に備えて、現在の木や植物の種を未来に向けて安全に保管しておくものだ。北極圏に位置するノルウェー領のスピッツベルゲン島にあるこの保管庫は、地殻変動がなく、永久凍土であり、海抜が高いため極冠が溶けても乾燥し、最悪の場合でも200年間は完全に融解することはない。安全のため、メインの保管庫は砂岩の山の中に120mも埋め込まれており、そのセキュリティシステムは強固なものとなっているという。2021年6月現在、種子保管庫は108万1026種類の作物サンプルを保存している。
音楽は、種子保管庫が使用しているのと同じ山の中にある専用の保管庫に保存される予定だ。使用するガラスは不活性な素材で、横75mm(3インチ)、厚さ2mm(1/8インチ以下)のプラッターに成形される。レーザーで3次元のナノスケールのグレーティングと変形を重ね、データをガラスにエンコードする。機械学習アルゴリズムは、偏光した光がガラスを通過する際に生じる画像やパターンを解読してデータを読み取る。石英ガラス製のプラッターは、電磁パルスや最も過酷な環境条件にも完全に耐えることができるという。焼いても、煮ても、磨いても、水浸しにしても、ガラスに書き込まれたデータを劣化させることはない。しかし、本当に何千年も使えるかどうかのテストは、現在進行中だ。
Microsoftのプログラムマネジメント担当副社長であるJurgen Willis氏は、「今回の概念実証では、MicrosoftとElire社が協力して、Project Silicaが、時の試練に耐える媒体で、世界で最も貴重な音楽を後世に保存・保護するという目標を、ガラス製の革新的アーカイブストレージを使って実現できることを実証しました」と述べている。
もちろん、音楽保管庫を持つことも重要だが、スペースは限られているため何を保管するかということも重要だ。そこでGlobal Music Vaultは、世界中から音楽表現を集め、祝福と保護を目的としたプロジェクトARVを開始している。
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