Microsoftは、拡張現実と3次元オーディオを用いて、人々に目的の場所や見知らぬ場所を音でナビゲートする技術「Project Soundscape」の研究を終了し、2023年1月3日にオープンソースソフトウェアとして利用可能にすることを発表した。今後、アプリのソースコードがGitHub上で公開され、ビルド方法と使用方法に関するドキュメントも併せて公開される予定だ。
MicrosoftのProject Soundscapeは、3D、拡張現実のオーディオを提供し、音による没入感のある体験が得られるユニークな形のナビゲーション技術として、2017年に設立された。翌年にiOSで発表されたこのアプリケーションは、アンビエントサウンドだけでなく、ユーザーがポイントに接近する方法に応じて、ポイントからさまざまな音声の合図を得る「オーディオビーコン」を搭載していることを売り物にしていた。これにより、小さなディスプレイの指示に従う必要がなく、オーディオがモビリティを高め、ナビゲーション体験を広げ、またアクセシビリティの向上も期待できるという。
今回のオープンソース化に伴い、「Soundscape」アプリはApp Storeからのダウンロードができなくなる。ただし、すでにインストールされている方は、2023年6月まで使用することが可能だ。アプリを有効にしていたAzureのサービスについても同様で、バグやサービスの停止についても同期間中に対応する予定とのこと。なお、オープンソースのリリースでは、オリジナルのプロジェクトと同様、iOSのみをサポートする予定だ。
Microsoftは、プレスリリースで以下のように述べている。
Soundscapeの旅を通して、私たちはSoundscapeが可能にする多くの貴重な体験、例えば移動指導者の能力向上、アダプティブスポーツにおける音声の役割の理解、視覚障害者が場所に行き、彼らの生活に必要な活動を行うためのサポートなどを発見し、嬉しく思っています。Soundscapeのコードをオープンソースソフトウェアとして公開することで、私たちはその関心と可能性がさらに高まることを望んでいます。
今回のオープンソース化について、同社は今後はコミュニティ主導による開発の継続を期待しているようだ。
Microsoft Research が新しいアクセシビリティの革新的な領域へと拡大を続ける中、Soundscape コードのオープンソース ソフトウェアのリリースが、空間音声ナビゲーション体験の信頼性と実用性をさらに発展させるためにコミュニティを支援することを期待しています。
この動き自体が企業の内部でどのような決定の下に行われたのかは不明だ。オープンソース化と言えば聞こえはいいが、昨今の世界経済の状況を鑑みるに、実際にはこれはコスト削減の一つとして行われた可能性も考えられる。
オーディオによるナビゲーションは、特に視力に悩みを抱える方にとっては大きな意味を持つ。企業が利益の追求を行うのは仕方のないことだが、Microsoftのような大企業がアクセシビリティ向上に対する投資を控える動きを見せることは、他の企業が同様にこの分野への投資を萎縮する動きに繋がる可能性もあるのではないだろうか。
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