天文学者は日常的に、おなじみの可視光線から電波、赤外線、ガンマ線まで、電磁スペクトルのさまざまな波長を使って宇宙を探査している。電磁スペクトルを通して宇宙を研究することには問題があり、私たちは宇宙が38万年前の時代の光しか見ることができない。別のアプローチとしては、宇宙初期に存在したと考えられている重力波を利用することで、さらに過去にさかのぼることができるかもしれない。
重力波の概念は実にシンプルだ。宇宙空間を巨大な海と想像してみてほしい。 その湖の中で物体が動くと、水中に波紋が広がる。海の霧が視界を遮るように、波紋は水中を伝わる。重力波は、物体の動きによって生じる空間の波紋のようなものである。1916年にEinsteinが一般相対性理論で予言したアイデアである。
重力波は単なる理論ではなく、検出されている。LIGO-Virgo天文台は2015年9月15日、13億光年離れた太陽質量29個と36個の2つのブラックホールの合体から重力波を検出した。それ以来、100回以上の検出があり、重力波は確実に実在している。
サウサンプトン大学のRishav RoshanとGraham Whiteは、重力波を使って宇宙の初期を探ることができると考えている。 宇宙が形成された初期には、宇宙空間はイオン化したガスで満たされていたため不透明であり、電磁波は透過しなかった。ロシャンとホワイトは、この障壁を突破できると考えている。
論文では、重力波を検出するための3つの主要な戦略、すなわちパルサー・タイミング・アレイ、アストロメトリー、干渉計について論じている。これらの技術は類似しており、いずれも重力波がシステムの要素間の空間を乱すことに依存している。干渉計の場合、システムの光学系の間の空間の乱れが重力波の存在を明らかにする。パルサーアレイの場合、既知のパルサーシステムからのパルスのタイミングの変動が重力波の存在を明らかにする。
発見以来、重力波は宇宙の果てで起きている出来事について貴重な情報を提供してきた。そして今、重力波は宇宙だけでなく、時間を超えた謎の解明にも利用できそうだ。標準模型(1970年代に開発されたもので、強い力、弱い力、電磁力、重力という4つの基本的な力を考慮した物質の振る舞いを明確にしたもの)を超える宇宙の完全な理解を得るためには、重力波が鍵を握っているようだ。
この記事は、MARK THOMPSON氏によって執筆され、Universe Todayに掲載されたものを、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(表示4.0 国際)に則り、翻訳・転載したものです。元記事はこちらからお読み頂けます。
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