Googleは、AIを使って洪水を予測することに成功したと発表した。同社によれば、「世界規模のナウキャストの信頼性を、平均してゼロから5日前まで」向上させることができたという。場合によっては、洪水が起こる1週間前から洪水を予測することもできたと言うのだ。洪水は世界中で最も一般的な自然災害であるため、精度の高い早期警報システムは最も求められている物の1つだ。この研究の成果は、科学誌『Nature』にも掲載された。
洪水を前もって予測するのが難しい理由のひとつは、多くの河川に流量計がないことに起因する。流量計は、降水量や流域の物理的な情報といった関連データを提供するのに役立つものだ。Googleは、過去の出来事、河川水位の測定値、標高や地形の測定値など、あらゆる関連データを用いて機械学習モデルを訓練することで、この問題を回避した。その後、地域化された地図を作成し、それぞれの場所で「数十万回」のシミュレーションを行った。この技術の組み合わせにより、モデルは今後の洪水を正確に予測できるようになった。
Googleは、最終的な目標として、現地のデータが利用できない地域であっても、洪水予測の精度を世界レベルまで拡大することにを目指しているという。
この技術によって、Googleは80カ国、総人口4億6,000万人の正確な洪水予測を提供できるようになった。同社はこれらの予測をGoogle検索、Googleマップ、Android通知で利用できるようにした。この情報は、2022年に運用を開始した同社独自のWebアプリ「Flood Hub」からも入手できる。
論文
参考文献
- Google The Keyword: How we are using AI for reliable flood forecasting at a global scale
研究の要旨
洪水は最も一般的な自然災害の一つであり、河川流量計ネットワークが密集していないことが多い発展途上国では、その影響が不均衡である。洪水リスクを軽減するためには、正確でタイムリーな警報が不可欠であるが、水文学シミュレーションモデルは通常、各流域の長いデータ記録に基づいて校正されなければならない。ここでは、人工知能に基づく予測が、未測量の流域における極端な河川事象の予測において、現在の最先端のグローバル・モデリング・システム(コペルニクス緊急管理サービス・グローバル洪水認識システム)によるナウキャスト(リードタイム0日)の信頼性と同等か、それ以上の信頼性を、リードタイム5日以内で達成することを示す。さらに、5年再現期間の事象に対する精度は、1年再現期間の事象に対する現在の精度と同等かそれ以上の精度を達成している。このことは、人工知能が、未開拓の流域において、より早く、より大規模で、より衝撃的な事象に対して洪水警報を提供できることを意味する。ここで開発されたモデルは、80カ国以上でリアルタイムで一般公開(無料かつオープン)されている早期警報システムに組み込まれた。この研究は、信頼できる洪水警報への世界的なアクセスを継続的に改善するために、水文データの利用可能性を高める必要性を強調している。
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