Googleがテキストから音楽を生成するAI「MusicLM」を発表

masapoco
投稿日 2023年1月29日 8:09
googleai

Googleの研究者は、入力されたテキストの内容を判断し、そこから内容に即した数分の楽曲を生成できるAIを開発した。DALL-Eのようなシステムが、書かれたテキストから画像を生成するのと同様に、口笛や鼻歌のメロディーを他の楽器に変換することさえできると言う。このモデルは「MusicLM」と呼ばれ、一般公開はされていないが、Googleはこのモデルを使って生成したサンプルを多数アップロードしている

Text-to-Musicモデルは新しいものではないが、論文によると、MusicLMは、28万時間に及ぶ音楽のデータセットで学習し、制作者が言うところの「非常に複雑」な記述(例えば、「印象的なサックスソロとソロシンガーによる魅惑のジャズソング」、「低いベースと強いキックによるベルリン90年代テクノ」)に対して一貫した曲を生成するようになったそうだ。Googleによると「MusicLMは音質とテキスト記述の順守の両方で以前のシステムを凌駕している」とのこと。

MusicLMは、様々なジャンルを生成することができ、さらに「ミュージシャンの経験レベル」(例:初心者、中級者、プロフェッショナル)も再現することができるという。今後、Googleは歌詞の生成、ボーカルの品質向上、より高いサンプルレートなどを検討する可能性がある。

実際に以下のようなテキストとそこから生成された音楽がサンプルとして公開してされているので転載しよう。

  • アーケードゲームのメインサウンドトラック。テンポが良く、アップビートで、キャッチーなエレキギターのリフが特徴。繰り返しの多い音楽で覚えやすいが、シンバルのクラッシュやドラムロールなど、意外性のある音も入っている。
  • スローテンポで、ベースとドラムがリードするレゲエ曲。エレキギターのサステイン。高音で鳴るボンゴ。ヴォーカルはレイドバックした感じでリラックスしており、非常に表現力が豊か。

また、面白い試みが絵画の説明から音楽を生成するものだ。ゴッホの星月夜や、クリムトの接吻などのWikipediaからの説明を入力し、音楽を出力したサンプルも掲載されている。

the starry night

『星月夜』(オランダ語:De sterrennacht)は、オランダのポスト印象派画家フィンセント・ファン・ゴッホが描いたキャンバスの油絵である。1889年6月に描かれたこの作品は、サン=レミ=ド=プロヴァンスにある彼の亡命先の部屋の東向きの窓から見た日の出直前の風景に、架空の村を加えて描かれている。 wikipedia

kiss

『接吻』この絵は、現代のアール・ヌーヴォー様式とそれ以前のアーツ・アンド・クラフツ運動の有機的なフォルムに影響を受けたスタイルで装飾された精巧で美しいローブをまとい、体を寄せ合うカップルを描いている。wikipedia

AIが生成する音楽自体は以前からあり、それこそポップスの作曲などにも用いられてきた。最近では、AI画像生成エンジンStableDiffusionを使い、テキストプロンプトをスペクトログラムに変換し、それを音楽に変換する「Riffusion」なるものも登場していた。論文では、MusicLMは「品質とキャプションへの忠実さ」の点で、また音声を取り込んでメロディーをコピーできる点で、他のシステムを凌駕することができるとしている。

その他のAI製品と同様に、GoogleはMusicLMに対して、同様の技術を持つ同業他社よりもかなり慎重な姿勢を見せている。「現時点ではモデルを公開する予定はありません」と論文は結んでおり、「クリエイティブなコンテンツの潜在的な不正流用」(盗作と読む)、「文化の流用や虚偽表示」の可能性をリスクとして挙げている。

この技術が、いずれGoogleの製品に登場する可能性もあるが、今のところ、この研究を利用できるのは、音楽AIシステムを構築している他の人たちだけだ。Googleによると、約5,500の音楽とテキストのペアを含むデータセットを一般に公開しており、他の音楽AIを訓練・評価する際に役立つ可能性があるという。


論文

参考文献

研究の要旨

「歪んだギターリフに支えられた落ち着いたバイオリンの旋律」といったテキスト記述から、高忠実度の音楽を生成するモデル、MusicLMを紹介する。MusicLMは、条件付き音楽生成プロセスを階層的な配列間モデリングタスクとして捉え、24kHzで数分間に渡って一貫性のある音楽を生成する。実験により、MusicLMは音質とテキスト記述の遵守の両方において、従来のシステムを凌駕することが示された。さらに、MusicLMはテキストとメロディの両方を条件とすることができ、テキストのキャプションに記述されたスタイルに従って口笛や鼻歌のメロディを変換することができることを実証している。今後の研究を支援するため、我々は5.5kの音楽とテキストのペアからなるデータセット、MusicCapsを一般に公開する。



この記事が面白かったら是非シェアをお願いします!


  • thermal paste greese
    次の記事

    ベストCPUグリス2023:90種類の製品を比較!オススメはこれだ!

    2023年1月29日 15:26
  • 前の記事

    日本、米国・オランダと共同で中国に対する厳しい半導体規制を実施へ

    2023年1月29日 7:44
    tsmc semiconductor fab14 production 1

スポンサーリンク


この記事を書いた人
masapoco

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

おすすめ記事

  • openai

    OpenAI、15秒の音声サンプルから感情豊かで自然な音声を合成できる「Voice Engine」を発表

  • a04c35e8e555c1cc7ae1d6a5f3159856

    MicrosoftとOpenAI、1000億ドル以上をかけて超人的AI開発のためのスーパーコンピューター「Stargate」を開発する計画

  • Sam Altman TechCrunch SF 2019 Day 2 Oct 3 cropped cropped

    ベンチャーキャピタリスト、OpenAIのSam Altman氏を“誇大妄想的”と非難

  • google logo image

    Googleが非営利団体を対象に2000万ドルの資金を提供し生成AI活用を支援

  • Pixel 8 in Rose.max 936x936.format webp

    Google、方針を転換しPixel 8にもGemini NanoによるオンデバイスAI機能を搭載へ

今読まれている記事