天文学者は、全天サーベイの画像に隠された重力レンズを見つけるのに、新しい機械学習アルゴリズムがどの程度信頼できるかを評価している。この種のAIは、確認が必要な約5,000個の重力レンズの候補を見つけるために使用された。確認に分光法を用いたところ、国際チームはこの手法の成功率がなんと88%であることを突き止めた。つまり、この新しいツールを使えば、この不思議な物理学の癖をさらに何千個も発見できる可能性があるということになる。
「これらのレンズは非常に小さいので、もしぼんやりとした画像であれば、それらを検出することはできないでしょう。私たちの分光観測によって、重力レンズが単なる偶然の重ね合わせではなく、本物であることを示す3D画像を作成することができました。」と、研究を率いた ARC Centre of Excellence for All Sky Astrophysics in 3-Dimensions (ASTRO3D) と NSW 大学の Kim-Vy Tran 博士は述べている。
科学者たちは、重力レンズが、ビッグバン以降の銀河の進化を描き出す能力を一変させる可能性があると述べている。この種のレンズ作用は、遠くの天体からの光が、同じ視線上にある近くの巨大な天体によって歪められるときに起こる。この歪みは効果的に巨大なレンズを作り出し、背景の光源を拡大するため、天文学者はレンズが作り出した円弧や環の中にある、他の方法では遠すぎて見えないような天体を観測することができるのだ。
重力レンズは、天文学のための素晴らしいツールだ。重力レンズは、銀河のような遠くの天体を明らかにするだけでなく、これらの銀河がどのくらい遠くにあるのかについての情報を提供することもできる。さらに、重力レンズのパターンの性質を分析することで、暗黒物質が銀河の中でどのように分布しているかを知ることができ、さらに、宇宙構造の発達や宇宙の膨張を調べることもできるという。
この機械学習アルゴリズムは、オーストラリアのスウィンバーン大学のColin Jacobs氏によって開発されたものだ。彼はこの手法を使って、何千万もの銀河の画像をふるいにかけ、サンプルを5,000個にまで絞り込んだ。ダークエネルギー探査のような他の探査も、レンズ候補を見つけるために使われている。
Tranたちは、ハワイのKeck天文台とチリのVery Large Telescopeを使って、5,000個のレンズ候補のうち77個のレンズを評価した。その結果、77個のうち68個が、広大な宇宙距離にまたがる強力な重力レンズであることが確認された。このことは、このアルゴリズムが何千もの新しい重力レンズを発見するのに十分な信頼性を持っていることを示唆している。これまで、重力レンズはなかなか見つからず、日常的に使われているのは100個程度に過ぎなかった。
スウィンバーン大学のKarl Glazebrook教授(論文の共同科学リーダー)は、プレスリリースで「成功率がこれほど高くなるとは夢にも思いませんでした。今、私たちはハッブル宇宙望遠鏡でこれらのレンズの画像を得ていますが、それらは顎が外れるほど美しいものから、私たちが解明するのに相当の努力を要するであろう極めて奇妙な画像まで、多岐にわたっています。」と述べている。
この研究は、ASTRO 3D Galaxy Evolution with Lenses (AGEL) 調査の一部だ。Tran氏によると、AGELでの現在の目標は、年間を通して北半球と南半球の両方から観測できる約100個の強い重力レンズを分光学的に確認することだとのことだ。
この記事は、Universe Todayに掲載されたものを、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(表示4.0 国際)に則り、翻訳・転載したものです。元記事はこちらからお読み頂けます。
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