地球は、産業革命が始まった頃に比べ、約1.1℃気温が上昇していることが分かっている。しかし、その温暖化は一様に起こっているわけではなく、地域によっては他の地域に比べて遙かに速いペースで温暖化が進んでいることが明らかになった。その地域の1つが北極だ。
- 論文
- Communications Earth & Environment : The Arctic has warmed nearly four times faster than the globe since 1979
- 参考文献
- Phys.org : Arctic warming four times faster than rest of Earth: study
- Finnish Meteorological Institute : Warming in the Arctic region has been four times faster than the global average
北極圏が、地球上の他の地域とはに比べて温暖化のペースが速いことは既に知られていた。しかし、新しい研究では、この効果が大幅に過小評価されているとのことだ。論文では、北極圏で起こっている温暖化の速度は、世界平均の約4倍で起こっており、つまり、北極は1980年に比べて平均で約3℃も気温が上昇していることになる。
北極には繊細で微妙なバランスのとれた気候要素が含まれているため、このような現象は憂慮すべきものだ。
なぜ北極の温暖化はこれほど速いのだろうか。その理由の大部分は、海氷に関係している。海氷は薄い海水の層で(通常1メートルから5メートルの厚さ)、冬には凍り、夏には部分的に融ける。
海氷は明るい雪の層で覆われており、入ってくる太陽放射の約85%を反射して宇宙へ返してしまう。一方、外洋ではその逆が起こる。地球上で最も暗い海は、日射の90%を吸収してしまうのだ。
北極海は海氷で覆われているとき、大きな反射板のような役割を果たし、日射の吸収を抑えている。しかし海氷が溶けると、その分太陽光線の吸収率が上がり、さらに海氷の融解が進むという循環に陥ってしまうのだ。
この循環は、北極温暖化増幅と呼ばれる現象に大きく関わっており、北極圏が地球の他の地域よりもはるかに温暖化している理由を説明するものである。
数値気候モデルは、北極温暖化増幅の大きさを定量化するために使用されている。これは、北極の気温が世界平均の2.5倍の速さで上昇していることを意味する。今回の研究では、過去43年間の地表面温度の観測記録に基づき、北極温暖化増幅率を約4倍と推定している。
さらに研究グループによると、北極の一部は、その期間に、地球平均の7倍もの速度で温暖化が進んだそうだ。彼らは計算を現在の気候モデルと一致させようとしたが、4 倍の温暖化率をシミュレートするのに苦労し、北極温暖化増幅が現在過小評価されているという考えを強くするだけだったという。
気候モデルでこれほど高い値が得られることは稀である。このことは、モデルが北極の増幅を引き起こすフィードバックループを完全に捉えていない可能性を示唆しており、結果として、将来の北極の温暖化とそれに伴う潜在的な影響を過小評価している可能性がある。
温暖化の傾向が続き、より多くのデータが公開されるにつれて、これらの観測結果はよりハッキリとなり、北極圏にとって不吉な未来を予見させる内容となるだろう。
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