Appleは最近、Qualcommとの5Gモデム供給に関する提携をさらに3年間更新したが、この事実は、Appleが自社製のベースバンドチップ開発において、無数の問題にぶつかっているという複数の報道に重みを与えている。今回、Wall Street Journalによる報道では、最初の5Gモデムのプロトタイプは速度が遅いだけでなく、すぐにオーバーヒートしてしまい、Qualcommの現行バージョンよりもかなり劣っていたと報告されているのだ。
WSJによると、Appleの社内5Gモデム・プロジェクトのコードネームは「Sinope」と呼ばれている。WSJは、Appleが社内5Gモデムの開発における潜在的な落とし穴を監督することができなかったと言及している。さらに、マネージャー間のコミュニケーション不足が事態をさらに難しくしたとのことだ。
また、初期のプロトタイプはパフォーマンスやオーバーヒートの問題が多発し、回路基板は現世代のiPhoneの半分のスペースを占めるほどに大きく、それらのコンパクトなロジックボードと合体させるのは非現実的だった。社内5Gモデム・プロジェクトが開始されたのと同じ2018年に同社を去ったAppleの元無線機器ディレクター、Jaydeep Ranade氏は、カスタム・シリコン分野でのAppleの実力は比類ないが、だからといって同社にモデムを作る能力があるとは言えないと述べている。
最大のハードルは、これらのモデムが世界中の厳しい接続規制に準拠しなければならないことで、地域ごとに条件や基準が異なる。また、通信会社との駆け引きも難航したため、Appleがカスタムソリューションの発売を延期し続けたのも当然である。要するに、Appleが自社製5Gモデムに期待をかける一方で、非現実的な目標をチームに課した結果、何度も頓挫することになったのだ。
報告書はまた、匿名のApple幹部がこうした課題を他の誰よりも理解していたことにも触れており、この問題に詳しい人物によれば、最初のカスタム5GチップはQualcommの最高のモデムであるSnapdragon X75よりも3年遅れていたという。これらのチップが大量生産された場合、他のモデムに太刀打ちできないことから、AppleがiPhone 15シリーズで最初のソリューションをデビューさせなかったのは驚くことではない。この様子からすると、来年のiPhone 16の発表の際にも発表されないかもしれない。
Appleは早ければ2025年までに初の自社製5Gモデムを発表すると見られているが、プロトタイプから発せられる性能と効率の課題を考えると、正式発表が再び遅れる可能性は高そうだ。
Sources
- The Wall Street Journal: Inside Apple’s Spectacular Failure to Build a Key Part for Its New iPhones
- via MacRumors: WSJ: Apple’s 5G Modem Prototypes ‘Three Years Behind Qualcomm’s Best Chip’
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