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たった数十人のリスナーの脳スキャンをもとに、何がヒット曲で何がヒットしないかをほぼ完璧に、97%という驚異的な精度で予測する事が出来るAIシステムの開発に成功した。

これは、クレアモント大学院大学の研究者らが行った研究で示された「ニューロフォーキャスティング」と呼ばれる機械学習技術を用いたもので、少数の人々の神経反応を外挿し、集団レベルの影響を予測するものだ。

これを利用することで、ラジオ局やストリーミングサービスは、リスナーを楽しませるためにどの曲を流すべきか、あるいはリストに追加すべきかをより適切に予測できるようになると、研究チームは説明している。

現在、こうした音楽サービスの中には、人間のリスナーと他のAIの両方のデータを使って、どの曲をプッシュするかを決めているものがあるが、これらのアプローチを合わせても、その精度は50パーセント程度にしかなっていない。

これに対して、今回示された新たないアプローチは、曲全体のデータがあればほぼ完璧な精度でヒットを予測出来るだけでなく、各シングルの最初の1分間を聴いた人の脳スキャンに基づいて、チャートの上位を予測することが出来るというのだ。

クレアモント大学院大学の神経経済学者で、この研究の上級著者であるPaul Zak氏は、「神経生理学的データに機械学習を適用することで、ほぼ完璧にヒット曲を特定することができました。33人の神経活動が、何百万人もの他の人が新曲を聴いたかどうかを予測できるというのは、非常に驚くべきことです。この精度に近いものは今まで示されていません」と、その成果を語る。

研究チームは、クレアモント・カレッジとその周辺地域から18~57歳のボランティア33人を集め、心拍数と脳活動モニタリングシステムの両方を装着した。

Zak教授は次のように述べている:「我々が収集した脳信号は、気分やエネルギーレベルに関連する脳ネットワークの活動を反映しています」。

各参加者は、当時最近リリースされた24曲のプレイリストを聴き、その後、聴いた音楽の中から好みのものを表現してもらった。

音楽は、この研究に協力したストリーミングサービスが選択し提供したものだ。13曲は70万回以上聴かれた「ヒット曲」、残りの11曲は「ヒットしなかった曲」だった。

実験に参加した曲は、ロック(girl in redの「Bad Idea!」)、ヒップホップ(Roddy Ricchの「The Box」)、電子ダンスミュージック(Tones and Iの「Dance Monkey」)など、さまざまなジャンルに及んでいる。

研究チームは、神経生理学的データを収集した後、さまざまな統計的アプローチを用いて、この情報が楽曲の商業的成功(オンラインストリーミングの回数など)を予測するのに利用できる可能性を探った。

さらに、この手法の精度を高めるために、機械学習モデルを訓練し、さまざまなアルゴリズムをテストして、最も高い予測結果を得ることに成功した。

その結果、線形統計モデルによって、24曲のうちどの曲がヒットするかを69%の成功率で予測できることがわかった。更に、機械学習を適用してデータを解析したところ、成功率は97%に跳ね上がったのだ。

また、曲の最初の1分間の神経生理学的データしか与えられなかったAIシステムでも、82パーセントの精度でヒット曲を予測することができたという。

「これは、ストリーミングサービスが、人々のプレイリストにヒットしそうな新曲をより効率的に特定できることを意味し、ストリーミングサービスの仕事を容易にし、リスナーを喜ばせることができます」と、Zak教授は説明する。

この技術は、将来的にさらにパーソナライズされたアプリケーションを見つけることに利用できる可能性がある。

「将来、今回の研究で使用したようなウェアラブル神経科学技術が一般的になれば、神経生理学に基づいた適切なエンターテインメントを視聴者に送ることができるようになるでしょう。何百もの選択肢を提示されるのではなく、たった2つか3つの選択肢を与えられるかもしれない。”彼らが楽しめる音楽を、より簡単かつ迅速に選択できるようになるのです」と、Zak教授は語る。

今回の研究では、分析に使用した楽曲が比較的少ないことや、研究参加者の属性が、適度に多様ではあるものの、すべての民族や年齢層を含んでいないことなど、いくつかの限界があることを研究チームは認めている。

しかし、研究チームは、このアプローチがヒット曲の特定にとどまらない用途で利用されることを期待している。

Zak教授は次のように結論づけた:「私たちの重要な貢献は、その方法論です。このアプローチは、映画やテレビ番組など、他の多くのエンターテインメントのヒット予測にも使えると思われます」。


論文

参考文献

研究の要旨

ヒット曲の特定は、有名なように難しい。従来は、ヒット曲の歌詞の側面を特定するために、大規模なデータベースから曲の要素を測定してきた。我々は、異なる方法論で、ヒット曲とヒットしなかった曲を特定するストリーミング音楽サービスから提供された楽曲セットに対する神経生理学的反応を測定した。それぞれの手法の予測精度を調べるために、いくつかの統計的アプローチを比較した。2つの神経尺度を用いた線形統計モデルでは、69%の精度でヒット曲を特定した。次に、合成セットデータを作成し、ニューラルデータに固有の非線形性を捉えるためにアンサンブル機械学習を適用した。このモデルは97%の精度でヒット曲を分類した。また、曲の1分目に対する神経反応に機械学習を適用したところ、82%の確率でヒット曲を分類することができ、脳がヒット曲を迅速に識別していることが分かった。この結果は、機械学習をニューラルデータに適用することで、予測困難な市場結果に対する分類精度を大幅に向上させることができることを示している。

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