先日、原因不明の事象の影響で科学運用を中断していたNASAのジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の近赤外線撮像分光器(NIRISS)について、1月30日(月)、観測装置の1つに生じた不具合から回復し、完全な科学運用に戻った事が報告されている。
NASAとカナダ宇宙庁(CSA)によると、宇宙線がジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を直撃し、観測装置の1つが故障した事が原因とのことだ。
JWSTにカナダから提供された近赤外線撮像分光器(NIRISS)は、1月15日に装置内で通信の遅れが発生し、不可解な異常が発生した。このため、NIRISSのフライトソフトウェアがタイムアウトし、科学運用の任から離れていた。その後、徹底的な検証と再起動、そして試験観測を経て今回の復旧を見た。
NIRISSは、電磁スペクトルのうち可視赤色を超える光を吸収する装置である。写真を撮ることもあれば、宇宙の遠く離れた場所にある塵やガスの組成を知るためのデータを収集する。この1年間、NIRISSは居住可能な異星人の大気を研究するために使用された。
NIRISSをはじめとするJWSTに搭載された3つの観測装置が最高の性能を発揮するために、NASA、CSA、欧州宇宙機関(ESA)は、地球から約160万km離れたラグランジュポイント(L2)に望遠鏡を飛行させることを選択した。JWSTは、地球からの熱放射に邪魔されることなく、遠く離れた場所から最も繊細な手がかりを感じ取ることができるのだ。
しかし、この位置は宇宙線の影響を受けやすい場所でもある。これは予想されたことで、NASAはブログ投稿の中で、「宇宙線に遭遇することは、どのような宇宙船を運用する上でも普通であり、予想されることである。」と、述べている。
「NASAとカナダ宇宙庁(CSA)のチームによる完全な調査の結果、原因は銀河宇宙線である可能性が高いと判断されました。銀河宇宙線は太陽系外からの高エネルギー放射線で、電気システムに障害を与えることがあります。」と、彼らは付け加えている。
JWSTのエンジニアは、NIRISSをオンラインに戻すための最も妥当な方法であると判断し、観測装置を再起動することを決定した。これで通信の遅れは解消されたように見えた。しかし、彼らは念のためにチェックを行い、今回正常動作が確認され、公式発表となった。
「再起動後、NIRISSのテレメトリデータは正常なタイミングを示し、完全に確認するために、チームはテスト観測を計画しました。1月28日、Webbチームは観測装置にコマンドを送り、観測を行い、その結果、1月30日にNIRISSが完全な科学的オペレーションに戻ったことを確認した」と、NASAは報告している。
この望遠鏡は2022年7月に最初の科学データを公開し、これまで見たことのない宇宙の景色で世界中の人々を感動させた。その後も次々に新たな科学的発見を提供し、我々が見たこともない、新たな宇宙の姿を提供し続けている。
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