昨年9月、Getty Imagesは著作権上の懸念から、AIで生成された作品のアップロードと販売を禁止していた。そして、同社のAIアートツールに対する最新の動きは、人気のAIアートツール「Stable Diffusion」のメーカーであるStability AIを、著作権侵害の疑いでロンドンの裁判所に提訴することである。
同社が今回の提訴にあたり公開した声明は以下の通りだ。
今週、Getty Images は、Stability AI が Getty Images が所有または代理するコンテンツの著作権を含む知的財産権を侵害したとして、ロンドンの高等法院で Stability AIに対する法的手続を開始しました。Getty Images は、Stability AIが、Getty Images が所有または代理する著作権で保護された数百万の画像と関連するメタデータを、Stability AI の商業的利益のため、コンテンツ制作者の不利益となるよう、ライセンスなしに不法にコピーし、処理したという立場をとっています。
Getty Images は、人工知能が創造的な努力を刺激する可能性があると考えています。したがって、Getty Images は、個人および知的財産権を尊重する方法で、人工知能システムのトレーニングに関連する目的のために、主要な技術革新者にライセンスを提供しました。Stability AI は、Getty Images にそのようなライセンスを求めず、その代わりに、単独での商業的利益を追求するために、実行可能なライセンスオプションと長年の法的保護を無視することを選択したと考えています。
Getty Images Statement
Getty ImagesのCEOであるCraig Peters氏は、The Vergeのインタビューに応じ、同社がStability AIに「letter before action」(英国での訴訟が差し迫っていることを正式に通知するもの)を発行したことを明かしている。なお、米国などその他の地域での訴訟については述べていない。
訴訟の詳細は明らかにされていないが、Peters氏はThe Vergeに対し、訴訟要件には著作権やWebスクレイピングなどのサイトTOS違反が含まれると語った。さらに、Peters氏は、同社は今回の訴訟で金銭的な損害賠償を求めているわけではなく、今後の訴訟で有利な前例を作りたいだけだと説明している。
「Stable Diffusion」や「Midjourney」などのAIアートツールは、既に人間が作成した既存の画像・アート作品から学習することで、新たな画像を生成する機能を獲得しているが、コンテンツ保有者やクリエーターらは、これが彼らの同意なしに行われた行為であり、著作権を侵害していると考えている。
特に、Stable Diffusionのトレーニングに利用されたデータセット「LAION」については、Waxyが分析したところ、Getty Imagesをはじめとするストックイメージサイトがコンテンツの大部分を占めていることがわかっている。Getty Imagesの存在を示す証拠として、下の画像例のようにAIソフトウェアが同社のウォーターマークを再現する傾向があることが確認されている。
一方で、AIを作製した企業は、この行為がフェアユースにあたると主張している。
フェアユースとは、教育やニュース共有などの目的で、原作者の許可なく著作物を限定的に使用することを認める法理で、多くの生成モデル作成者は、学習データがこれに該当すると主張している。しかし、フェアユースの適用はケースによって異なるため、データセット内のすべての著作物が該当すると一概に言い切ることはできない。
「私たちは、このような事柄を真剣に受け止めていることをご理解ください。これがフェアユースではないと考える人は、技術を理解しておらず、法律を誤解しています」と、Stability AIの広報担当者はViceへの声明の中で語っている。
これについては、法律の専門家でも意見が分かれている。ただし、このような問題は法廷で確実に判断されなければならないという点では一致している。
既に今回のGetty Images社の訴訟に先立って、3人のアーティストが、Stability AIなどを含むAI企業に対して初の大規模な訴訟を開始しており、こちらの行く末も気になるところだ。
Source
- Getty Images: Getty Images Statement
- via The Verge: Getty Images is suing the creators of AI art tool Stable Diffusion for scraping its content
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