2022年の衝撃的だった科学・テクノロジーニュース記事まとめ

masapoco
投稿日
2022年12月30日 7:05
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2022年もいよいよ終わりを迎えようとしているが、ここで今年を振り返り、革新的、衝撃的だった科学・テクノロジーの記事をご紹介しよう。とはいえ、当サイトは2022年2月19日から運営を開始していたため、それ以前の物に関してはご紹介出来ないのでご了承頂きたい。

素粒子物理学の標準模型が覆される実験結果

今年4月に発表された素粒子物理学の実験は、基本粒子であるWボソンの質量が素粒子物理学の標準模型で予測される値から大きく乖離していることが示唆された。今後精査されるが、もしそれがうまくいけば、標準模型にヒビが入り、新しい物理学が明らかになるかもしれない。

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の稼働

NASAがついに人類の夢の望遠鏡、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を稼働させた。この望遠鏡は、稼働直後から素晴らしい画像を提供してくれているが、その「ウェッブの初のディープフィールド」画像の中にはこれまでに発見された中で最も古い銀河が含まれていた事など、その桁違いの性能を見せつける物だった。

その後も、我々が見たことのない素晴らしい宇宙の景色を提供し続けてくれたり、搭載された近赤外線分光器 (NIRSpec) によって遙か遠くの星の大気組成を検出することが出来るなど、驚きを与え続けてくれたジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、来年も素晴らしい宇宙の姿を映し出してくれる事だろう。

ジェネレーティブAIが大きな話題になる

これまでにもジェネレーティブAIは研究が進められてきたが、今年はこれが大きく話題になった年ではないだろうか。Text-to-image AIは、かつては単なる研究のおもちゃだったが、DALL-E 2、Imagen、Stable Diffusionなどの登場により、一般の人々がそれで遊べるようになり、インターネット上に奇抜な絵が溢れ、爆発的に盛り上がった。中にはコンテストに優勝してしまう例もあり、その能力の高さに驚かされたのではないだろうか。

また、OpenAIのGPTテキストジェネレータの一般公開版であるChatGPTの発表も、人々の想像力をかきたてるとともに、悪用されることへの懸念を抱かせた。このようなAIシステムを活用したビジネスがすでに生まれており、その活用をめぐる議論は今後も続いていくだろう。

2023年にもAIの進化は続いていくだろう。ChatGPTで用いられた大規模言語モデルのGPT-3の次世代版GPT-4の登場により、ついにチューリング・テストを突破する初のAIが登場するとも言われている。

そして、ChatGPTなどのAIチャットボットの進化により、Googleなどの検索エンジンは大きな岐路に立たされることになるかも知れない。

NASAによる小惑星に探査機を衝突させて軌道をそらす実験の成功

9月、NASAの科学者たちは、550キログラムのDouble Asteroid Redirection Test (DART)宇宙船を、小惑星ディモルフォスに衝突させ、軌道をそらす実験に成功した。

探査機の当初の目標は、ディモルフォスの軌道を、よりそのパートナーである幅390mの小惑星ディディモスに対する周回軌道を少なくとも73秒変更することだったが、探査機は実際にディモルフォスの軌道を32分も変更したのである。NASAは、この衝突を惑星防衛の分岐点とし、人類が地球外生命体の破滅を回避する能力を所持している事を初めて証明したとしている。

量子コンピュータによるホログラフィックワームホールのシミュレーションに成功

物理学者は、Googleの量子コンピュータ Scamore 2を使用して、史上初のホログラフィックワームホールをシミュレートし、その中に情報を転送することに成功した。この時空の裂け目は、重力ではなく、量子もつれ(2つ以上の粒子を結びつけて、一方を測定すると他方にも瞬時に影響を与えること)によって作られたもので、宇宙はホログラムであり、低次元の表面では量子効果と重力が結合して一つになるという理論を検証するために作られた。

この実験は、Sycamore 2チップに搭載されたわずか9個の量子ビットを使って行われた。チップの両側にある2つの量子ビットをもつれさせることで、あたかもワームホールでつながった2つのブラックホールのように、片側から反対側へ情報をそのまま転送することができたのだ。研究者らは、ブラックホールが本物の奇妙な変種とみなされるほど厳密にシミュレーションできたかどうか確信が持てず、最終的にこの量子コンピューターリフトを「出現型」ブラックホールと名付けた。この実験の成功により、量子力学と重力が交差する場所を検証し、我々が結局はホログラムであるかどうかを解明するために使用できる、まったく新しいシステムが誕生したのだ。

核融合実験における初のネット・エネルギー・ゲイン(正味エネルギーの利得)を達成

今年も終わろうかという12月14日、カリフォルニア州ローレンス・リバモア国立研究所にある米国政府出資の国立点火施設(NIF)の科学者たちは、世界最強のレーザーを使って、物理学者が1世紀近くにわたって夢見てきたことを実現した。原子炉の炉心から出るプラズマのエネルギーが、レーザーで照射されたエネルギーを上回った事が、史上初めて観測されたのだ。この実験結果は、核融合科学者にとって、無限に近いクリーンな電力という遠い目標が、実際に達成可能であることを示す物となった。

しかし、プラズマのエネルギーがレーザーのエネルギーを上回っただけで、原子炉全体のエネルギーを上回ったわけではないことに、科学者たちはまだ注意を促している。さらに、爆弾開発のための熱核爆発実験のために建設されたNIF炉で使用されているレーザー閉じ込め方式は、スケールアップが困難だろう。核融合炉の実用化にはまだ何十年もかかると見られる。だが、実現の道筋が示されたことは大きな偉業だ。



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