中国は、同国へのチップ輸出を規制する米国の決定に反対するため、世界貿易機関(WTO)に訴える手続きを開始したとのことだ。
中国側は、「米国が課した規制は、世界の産業サプライチェーンの安定性を脅かすものだ」と主張している。
一方で米国側は、「この決定は国家安全保障上の理由からなされたものである」としており、中国の国力増大が懸念されている状況下にあって、米国側が規制を撤廃することはまずあり得ないだろう。
「中国は、我々の懸念に対処し、我々の正当な利益を守るために必要な方法として、WTOの枠組みの中で法的措置を取る」と、中国商務省はReutersの声明の中で述べている。
とはいえ、この協議要請は、WTOにおける長大なプロセスの最初のステップであるため、すぐに解決することは期待できない。そしてそもそも、WTOの決定に米国が従うかという問題もあるだろう。
米国は10月、中国の半導体とスーパーコンピュータ部門に対して複数の制裁措置を発動した。しかし、どの制裁も中国のチップ部門に深刻な影響を与えるため、中国がどの制裁に反対したいのか不明である。
今回の米国輸出規制では、14nm/16nmノード以下のノンプラントランジスタを用いたロジックチップ、128層以上の3D NAND、ハーフピッチ18nm以下のDRAMメモリチップの製造に使用できる米国製ウェハー・ファブ装置(WFE)と技術の輸入を制限している。また、米国市民は「ライセンスなしに、中国にある特定の半導体製造施設でのI.C.の開発、または生産を支援することはできない」とされている。
日経によると、さらに問題を複雑にしているのは、日本とオランダが、中国へのWFE輸出に、より厳しい規制を課すことに合意したことである。中国は、新たな規制を克服するために、チップ産業に約1430億ドルの補助金を投入する予定だと伝えられているが、中国のチップメーカーやウェハー・ファブ装置メーカーが日本、オランダ、米国の同業者と肩を並べるには、まだ何年もかかるだろう。
また、米国はチップメーカーに対し、米国の技術を使って製造した中国製プロセッサを販売することも禁止している。このプロセッサを使えば、41,600立方フィート(1178立方メートル)内に100 FP64 PetaFLOPS以上、200 FP32 PetaFLOPS以上の性能を持つスーパーコンピュータを自国内に構築することが可能になるためだ。事実上すべての先進的なCPUとGPUはアメリカの技術を使って製造または開発されているため、この制限はAMD、NVIDIA、Intelといった企業や、中国独自のBiren Technologyにも影響する。
半導体生産、高性能コンピューティング、人工知能は、いずれも中国にとって重要なハイテク分野であるため、中国としては当然、すべての制限が解除されることを望んでいる。一方、中国がWTOを説得し、米国に制裁を解除させることに成功するかどうかは不明である。
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