TransPod が時速 1,000 kmの超高速輸送用 真空チューブ鉄道「FluxJet」 を発表

masapoco
投稿日
2022年8月5日 14:07
TransPod FluxJet 6

カナダのTransPod社は、新たな真空チューブトレイン「FluxJet」を発表した。ジェット機よりも速く、しかも価格は半分。そして墜落の心配もないこのハイパーループは既に予備工事が始まっているとのことだ。

カナダのトロントで発表されたTransPod FluxJetは、「推進力の画期的な革新」「クリーンエネルギーの互換性」「非接触電力伝送の技術的飛躍」「“監視フラックス”という新しい技術」により実現するとのことだ。

この技術の核心は、“真空であること”だ。真空に近い状態のチューブ内でポッドを走行させることで、風の抵抗を最小限に抑えることが可能となり、屋外では巨大なパワーと摩擦熱の拡散を必要とする速度で、人や物を移動させることが可能となる。

Hyperlooop、Hyperloop TT、Hyperloop One、ET3、HyperPort等々、その他多くの設計と同様に、FluxJetは、磁気浮上方式を用いることで、転がり抵抗も排除する。ただし、磁気浮上が可能になるのは、高速区間を走り抜ける間だけだ。少なくとも時速300kmで走行し、時速1,000kmの巡航速度まで加速する準備が整うまで、「着陸装置」は格納されることはない。

同社は「画期的な革新技術」についてほとんど明らかにしていないが、「Veillance Flux」(監視フラックス)は、前方のチューブをスキャンして、その先にあるものに応じてチューブ内のポッドの位置を調整するビジュアル・ポジショニング・システムに関するもののようだ。長さ25mの各ポッドは、最大54人乗り、あるいは高速で移動させる必要のある貨物を搭載し、上下の対角線からサスペンションアームで外側に伸びる4つの「浮遊エンジン」を備えている。

ポッドにはバッテリーが搭載されているが、高速走行時は、非接触型のパワーピックアップユニットを伸ばして、チューブから給電される形となる。レンダリング映像では、紫色のプラズマが光っているのが確認出来るだろう。

TransPodは、5億5千万ドルの資金を調達し、カルガリー~エドモントン間の約300kmのプロジェクトを計画しており、既にプロジェクトは進行中とのことだ。TransPodのウェブサイトには、「環境影響評価を含む予備的な建設作業が開始された」とある。TransPodによると、最終的には総工費として180億ドルを見込んでおり、完成後は両都市間を約75ドルで45分間で移動することが可能になるとのことだ。この距離は、通常車で3時間以上かかるか、飛行機の場合は約125ドルかかる。

TransPodによると、カルガリーからエドモントンまでの高速道路の交通量のほぼ3分の1を削減することができ、このクリーンな交通手段のおかげで多くの炭素を節約することができるので、全体として木を植えたような効果があるとのことである。同社は、年間636,000トンの二酸化炭素の排出を削減することを見込んでいる。

しかし、夢の技術のようにも見えるハイパーループだが、その実現と維持にはこれまでにも様々な懸念が伝えられてきた。

まず、磁気浮上式鉄道は、それ自体の建設費用が非常に高価である事。そして、ハイパーループは、更にその上で何百kmもの距離を真空管で保つ必要があるため、その建設コストは非常に高価になることが懸念される。

さらに、300kmの真空管から空気を排出するのは技術的に非常に困難を伴う。それ以外にも、漏水、チューブの破損、地震活動、故障、テロ行為なども考えられ、ひとたびそういった事態が発生した場合、破滅的な結果をもたらす可能性がある。

また、時速1,000kmであることから、直線からわずかにずれただけでも、乗客や貨物を放り投げてしまう可能性がある。

今回TransPodが提案したカルガリー〜エドモントン間の180億ドルのプロジェクトは、1kmあたり6000万ドルで、他の高速鉄道案と比較してもかなり魅力的な数値だ。しかし、カナダはこれまで多くの高速鉄道案を検討してきたが、G7の中で未だに高速鉄道が一度も建設されたことがない国であることに変わりはない。今回も実現しない可能性もありそうだ。

とはいえ、このプロジェクトでは既にTransPodが投資家から5億ドルもの資金を引き出したという点は特筆に値するだろう。今後の動向に注目したい。



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