量子コンピュータによりレイトレーシングのパフォーマンスが最大190%向上する可能性

レイトレーシングと言えば、最近のゲームで言えば『サイバーパンク 2077』など、リアルタイムレイトレーシングによるその美しいグラフィックスが話題になったが、同時に求められるパフォーマンスの高さから、場合によってはフラグシップGPUでも手に負えない事があるのが現状だ。そんなレイトレーシングに関して、パフォーマンスを大きく改善する技術が、量子コンピュータの採用によって可能になるのではと言う研究結果が報告されている。

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NVIDIAのGeForce RTXシリーズから始まった、リアルタイムレイトレーシングのゲームへの導入によって、ゲームグラフィックスは大きく進化したが、レイトレーシングに求められる高い計算能力から、最新のGPUでも場合によっては処理が間に合わないの事がある。

米国、ポルトガル、英国の研究者は、レイトレーシングに求められる高い性能を解決するには、旧来のレイトレーシング・アルゴリズムと量子コンピューティングの組み合わせが有効ではないかと考え、研究結果を報告している。最近発表された内容では、量子コンピューティングがレイトレーシングのワークロードを強化し、性能を最大190%向上させることが示されている。この向上は、各光線の追跡に必要な計算数を削減し、テクノロジーの要件を大幅に削減することによって実現されるという。

グラフィックス技術におけるレイトレーシングは、特にゲームタイトルのレンダリング方法について、ゲームにおける大きな進化をもたらしている。しかし、このテクノロジーがいかに画期的であろうと、中々採用されないのが現状だ。それはひとえに、レイトレーシング導入のためのハードウェア要件と必要とする計算能力の高さにあり、特定のハードウェアが必要なため、ほとんどのユーザーは体感できていないと言うのが現状だ。

GPUベンダーは、AMD FSR 2.0、NVIDIA DLSS、Intelの次世代XeSSといった超解像技術を積極的に推し進めることで、低い解像度でレイトレーシング処理を行う事で、処理に必要なマシンパワーを削減しようとしている。その後に各超解像技術でアップスケールする事で、高解像度でレイトレーシングを実現した物と遜色ない物を再現しようとしているのだ。ただし、それはやはり完璧な物ではなく、時にはグラフィックの破綻を招く可能性もある。

研究者らは、レイトレーシングの計算コストを大幅に削減するさらに別の方法を模索している。研究グループは、レイトレーシングを有効にして処理した128×128の画像を取り上げ、3つの異なるケースで画像を最適化し、比較した。3つの処理とは、「古典的なレンダリング手法」、「最適化されていない量子レンダリング」、そして「最適化された量子レンダリング」の3通りだ。

「古典的なレンダリング手法」では、この小さな3D画像に対して26億7800万回の光線交差を計算する必要があった(光線1本あたり64回)。

一方、最適化されていない量子レンダリングでは、1本の光線に対して33.6回の交差計算が必要となり、その数はほぼ半減された(合計13億6600万回の光線交差計算が必要)。さらに、最適化された量子レンダリングと古典的なレンダリング手法のハイブリッドアルゴリズムでは、同じ画像をレンダリングするのに、わずか89万6000回の交差計算しか必要とせず、光線あたり平均22.1回と、現在のレンダリング技術で達成できる光線1本あたり64回の計算という数字とは程遠い結果となった。

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この技術の最も大きな欠点は、量子コンピュータのシステムであった。量子コンピュータや量子デバイスは、現在、NISQ(Noisy Intermediate-Scale Quantum)という製品カテゴリーで開発が進められている。これらの複雑なシステムは最高性能ではないため、レンダリングでは各画像を正しく計算するために数時間かかるため、シミュレーションには最適だが、ゲームのレンダリングには現時点ではほとんど使えない。

優れた結果が出たとはいえ、量産可能な技術とは程遠い。ここ1〜2年の量子コンピューティングの流れでは、利用可能な量子コンピューティングはまだほんのわずかだ。IBMは今後数年で量子コンピューティングの量を増やす予定との事だが、短期間でどこまで技術が進歩するかは未知数だ。

この研究は、古典的レンダリングと量子レンダリングのハイブリッドなアプローチへの扉を開くものだが、量子コンピューティングの現状では、研究者の成果は、実用化されるまでに数年はかかると思われる。

また、このアルゴリズムを統合するために、量子演算に特化した回路が必要になるかどうかも未知数である。その場合、開発コストと開発期間の両方がさらに先延ばしになる可能性も出てくる。

時間とコストがかかるため、コンシューマー市場にこの技術を顕著に広めることはまだまだ現実的ではないが、クラウドゲーミングの推進と、クラウドベースの量子コンピューティングの向上により、この新しいレンダリングシステムは、エンドユーザーではなく、大手ゲーム会社にハードウェアコストを抑えつつも素晴らしい結果を提供する選択肢の1つとして、より早く市場に出ることも期待できる。

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この記事を書いた人

TEXAL管理人。学校の授業でMS-DOSを使っていたくらいの年代。Windows95の登場で衝撃を受け、テクノロジー業界に興味を持つ。以来ガジェット・ゲーム情報を追い続けてうん十年。大学では物理を専攻していたこともあり、物理・宇宙関係の話題も大好き。

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