Epic Gamesは、同社開発のゲームエンジンの最新版「Unreal Engine 5」(UE5)を正式リリースした。ダウンロードと利用は無料で可能(ただし、商用利用の場合一定条件で使用料が発生する)
Unreal Engine 5がついに正式リリース
UE5は昨年アーリーアクセス版が公開された後、『フォートナイト』チャプター3で先行して導入され、プレイアブルな技術デモ『The Matrix Awakens: An Unreal Engine 5 Experience』も配信された。その後プレビュー版の公開などを経て、今回広く製品開発に使用可能な正式リリースという形になった。
XboxとPlayStationのスタジオが現在Unreal Engine 5のゲームをいくつか開発しているとのことだ。その中には、自社製エンジンから、UE5に切り替えたCD Projekt RED のように、以前から最新作を発表している企業もある。
UE5の新機能などについては、下記の通りとなる。
Unreal Engine 5の新機能
次世代のリアルタイムレンダリング
Unreal Engine 5 では、驚異的な高忠実度のディテールでリアルタイム ワールドをレンダリングするための、革新的な機能のコレクションが導入されている。
Lumen
Unreal Engine 5のグラフィックスに関する大きな特徴の1つが、照明エンジン「Lumen」(ルーメン)だ。
Lumenは、高品質で自然なバウンスライティングをリアルタイムで計算できるため、開発者はエディター上で光源やジオメトリを動かして、ゲーム実行時のバウンスライティングを正確に確認できる。たとえば建物の破壊や、扉の開け閉めといった動きにも対応できる完全に動的なグローバルイルミネーションがリアルタイムで可能になるため、開発者は実行時にシーンを静的に作成しておく必要がないという。
なお、Lumenが発表された当時は、PS5やXSXのGPUが有するリアルタイムレイトレーシング機能に対応していなかったが、正式版ではハードウェアに機能があれば、それを優先して使うようになっている。もちろん、ソフトウェアベースでのレンダリングにも対応するので、ハードウェアによるリアルタイムレイトレーシング機能がないゲーム機やGPUでも、Lumenは利用可能だ。
Nanite
「Nanite」(ナナイト)は、Epic Gamesが「仮想化マイクロポリゴンジオメトリシステム」と呼んでいる、Unreal Engine 5におけるジオメトリエンジンだ。最大の特徴は、数百万ポリゴンに及ぶアセットを直接読み込んだうえで、最適化した低ポリゴンモデルをコンテンツ制作者が生成することなくゲームエンジンが利用できるという点にある。映画品質のアセットを使いながら、現実的なフレームレートのゲーム映像を実現するという、Unreal Engine 5の新要素における中核を成すものだ。
現状のNaniteは、地形や柔軟に動いたりはしない物体の表現に使うものだ。しかし、Epic Gamesでは、将来的に樹木のように動く物体や、水のような半透明の表現にもNaniteを使えるようにしたいと検討しているそうである。
また、Lumen および Nanite とうまく連携するように特別に設計されている「仮想シャドウ マップ (VSM)」 により、描画不可を軽減し、もっともらしいソフト シャドウを実現することも可能となっている。Nanite と VSM は知覚できるディテールのみを処理してスマートにストリーミングするため、ポリゴン数やドローコール数の制限を大幅に取り除き、ディテールの法線マップへのベイクや LOD モデルの手動作成といった時間の掛かる仕事を削減してくれる。
また、プラットフォームに依存しない高品質なアップサンプリングシステム、「Temporal Super Resolution (TSR) 」も搭載している。これを使用することにより、レンダリング負荷を下げ、フレームレートを上げつつ、実際に出力される映像の解像度を高解像度設定でレンダリングされたものと同程度の高精細さで出力することが可能だ。
新しいオープン ワールド ツールセット
UE5では、オープンワールドの作成を高速に、簡単に、どのような規模のチームにとっても共同作業が行いやすいものにするための仕組みが搭載されている。
World Partition
「World Partition」は,オープンワールドタイプのゲーム制作作業を改善するレベルストリーミングシステムである。複数人の開発者が、巨大な1つの世界を構築しやすくするために、ワールドは自動的に適切なサイズのグリッドに分割され、必要なセルが読み込まれるようになる。
One File Per Actor (1 アクタあたり 1 ファイル) システムによってチームメンバーはお互いに足を引っ張ることなく同一のワールドの同一の領域について同時に作業できるようになる。
また Data Layers によって、一つのワールドについて複数のバリエーションを作成することも可能だ。例えば、同じ空間に存在するレイヤーとして、日中のバージョンや夜のバージョン、壊れる前と後のジオメトリを用意できるようになる。
そして、内部で倍精度値を使用するLarge World Coordinates (LWC) の初期サポートにより、リベースや他のコツを必要とせずに、UE5 で広大なワールドを作成するための土台を築いている。
キャラクターおよびアニメーション用のビルトイン ツール
Unreal Engine 5におけるアニメーション制作関連の変更では、制作の効率化を促進するものが多数盛り込まれている。UE5では、アニメーションに関するツール類がUnreal Editor内で直接利用できるようになり、外部ツールと行き来する必要がなくなっており、作業効率が大幅に改善されている。
また、既存のアニメーションを素早く簡単に再利用および拡張するための機能「IK リターゲッタ」が追加されている。これを使用すれば、スケルトンとプロポーションが異なるキャラクター間でアニメーションを転送でき、たとえば人間のアニメーションを狼にリターゲティングすることも可能だ。そして、IK リグを使用すれば、キャラクターのアニメーションを加算的に調整できる。たとえば、動いているキャラクターが常にターゲットに目を向けるようにすることなども可能だ。
また、リアルさと没入感を向上させるために、ゲームプレイ状況 (速度や地形の違いなど) を補うようにランタイム時にアニメーションを調整するために利用できる、いくつかの新機能も搭載された。「Motion Warping」という新機能は、単一のアニメーションから様々なターゲットに合わせてキャラクターのルートモーションの位置を動的に調整してくれる。例えば、様々な高さの壁に対する飛び越えアニメーションを作成できる。そして、「距離マッチング」を使用してアニメーションの再生レートを制御でき、「ポーズ ワープ」を使用してゲーム内キャラクターのモーションにうまく合致するようにポーズを動的に調整する事も可能となる。
完全にプロシージャルなオーディオ エンジン
UE5 で搭載された「MetaSounds」 はサウンドソースからオーディオ DSP グラフでの生成とフルコントロールを提供する高パフォーマンスのシステムだ。オーディオ レンダリングのすべての面の管理から、次世代プロシージャル オーディオ体験の駆動までを実現する。
MetaSounds は、サウンドにおけるプログラマブルなマテリアル パイプライン、レンダリングパイプラインのようなものだ。マテリアルエディタがシェーダーの制作を助けるように、オーディオでプロシージャルなコンテンツ制作が可能となる。動的なデータ駆動のアセット、ゲームのパラメータとサウンド再生のマッピング作成、大幅なワークフロー改善など様々な恩恵が得られる。
たとえば,ある動作のタイミングタイミングを調整するときに,サウンドを直接結びつけるといった調整が,これまでよりも簡単にできるようになるわけだ。
息をのむほど素晴らしい最終ピクセル イメージ
Unreal Engine 4.27 で導入されたパス トレーサーは、DXR で高速化された物理的に正確なプログレッシブ レンダリング モードであり、追加の設定は不要だ。イメージ コンテンツまたはリニア コンテンツを作成する場合、Unreal Engine だけを使用してわずかな時間で、オフライン レンダラ品質のイメージを生成できる。
Unreal Engine 5 のパス トレーサーでは安定性、パフォーマンス、機能の完全性が向上しており、ヘア プリミティブや目のシェーダー モデルのサポート、サンプリング、BRDF モデル、光のトランスポート、サポートされているジオメトリなどでの改良も行われている。
Sources
- Epic Games: Unreal Engine 5
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