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フォトニクススタートアップのLuminous Computingが1億500万ドルを獲得

フォトニクス(光工学)を利用して人工知能を駆動するスタートアップ、ルミナスコンピューティングが、ベンチャーキャピタルの支援を受け、マイクロソフト共同創業者のビル・ゲイツを含むさまざまな投資家からシリーズA資金として1億500万ドルを調達した。

2018年に設立されたこのスタートアップは、Gigafund、8090 Partners、Third Kind Venture Capital、Alumni Ventures Group、Strawberry Creek Venturesといった企業が参加する資金調達ラウンドを発表した。同社が2018年に受けたプレシード資金100万ドルと、その1年後に引き受けたシード資金900万ドルに追加するものだ。

Luminousの関係者によると、エンジニアリングチームの規模を2倍にし、カスタムチップとソフトウェアを構築し、商業規模の生産に備える予定とのこと。フォトニクスデザイナー、デジタルおよびアナログの超大規模集積(VSLI)エンジニア、パッケージングおよびシステム統合エンジニア、機械学習の専門家を積極的に採用していくようだ。

フォトニクスコンピューティングということで、これまでの電気信号を使ったコンピューターとは違い、「光」を使ったコンピューターの開発を目標に設立されたのがLuminous Computingだ。同社の目標は、信号を送るのに電線上を走る電気ではなく、光を使うことで、より高度で安価なAIシステムの開発を可能とする事だそうだ。

Luminousによると、従来の半導体素材が高速処理、低消費電力に適していないことから、データ伝送の際にボトルネックになっているというまた、電気信号は電気抵抗により多くのエネルギーを消費するし、より長い距離でより少ない情報を運ぶため、企業は現在、ハードウェアによる通信のボトルネックを補うためにソフトウェアに傾注している状態になっているという。

また、現在の「AIスーパーコンピュータ」(ハイエンドCPU+アクセラレータ)では、モデルの学習に必要な演算能力が追いつかず、モデルで使用されるソフトウェア技術も複雑化している。システム自体のスケールも十分ではなく、1,000個以上のプロセッサーを搭載したマシンでも、20%以下の効率で動作していることが多く、残りの時間は通信制限によりアイドル状態になっている状態だという。

我々は自然言語でコンピュータと対話し、コードの一部やエッセイを書くように頼むことができ、その出力はほとんどの人間が提供できるよりも優れたものになる。悔しいのは、人間が解決できないような画期的な問題に対処できるソフトウェアが存在するのに、そのアルゴリズムを実行できるハードウェアがない事だ

Luminous Computing CEO兼共同創業者 Marcus Gomez氏

そこでLuminous Computingは、異なる色の光を使用して複数のデータを同時に移動させることで、従来のチップのデータ伝送能力を凌駕できるという、フォトニクスコンピューティングに取り組んでいる。現在の試作品は従来型の最先端AIチップより3桁もエネルギー効率が高い結果が出ているという。同社は、AI開発の際に消費される電力の削減による、地球環境破壊を防ぐことも念頭に置いているという。

Luminousは計画の詳細を明らかにしていないが、2019年に発表された900万ドルのシードマネーに関するレポートでは、機械学習推論用にGoogleが作った小型ASICであるTPU3000個に匹敵する性能を有した単一のフォトニクスチップを作ることが目標であるとしている。

Luminousは90人以上の従業員を抱え、研究所にはそのチップの実用的なプロトタイプがあり、2年以内に開発キットを組織向けに出荷する計画だとのこと。

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masapoco

TEXAL管理人。中学生の時にWindows95を使っていたくらいの年齢。大学では物理を専攻していたこともあり、物理・宇宙関係の話題が得意だが、テクノロジー関係の話題も大好き。最近は半導体関連に特に興味あり。アニメ・ゲーム・文学も好き。最近の推しは、アニメ『サマータイムレンダ』

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