英国のグリニッジ王立博物館が毎年行っている天体写真コンテストが「Astronomy Photographer of the Year」だが、素晴らしい候補作の数々が公開された。これは、世界中から集められた何千枚もの優れた天体写真の中から厳選された物となり、最優秀賞はこの中から投票によって、9月15日(現地時間)にオンライン授賞式で発表となる。
この世の物とは思えない写真の数々
候補となった写真のいくつかをピックアップしてご紹介する。全てをご覧になりたい場合は、こちらから見ることが出来る。
Solar Inferno by Stuart Green
太陽の表面を撮影した物だが、この画像は通常の可視光をそのまま取り込んだ物ではなく、656.28 nmの狭い赤の帯域を除くすべての波長の光を選択的にフィルターにかけることで可視化されている作品だ。肉眼では確認できない太陽の表面の動きを見ることが出来る。
Clouds of Hydrogen Gas by Simon Tang
太陽の磁力線と水素ガスがぶつかり発生したプロミネンスを撮影した画像だ。その大きさは巨大で、容易に地球を飲み込んでしまうほど。実際には雲ではなく超高温のプラズマであり、ひとたび浴びれば地球は死の星になるだろう。この画像はドラマチックな効果のために色彩に少し加工を施してあるという。
Comet C/2021 A1 (Leonard) by Lionel Majzik
2021年初めて観測された、レナード彗星 (C/2021 A1)を撮影した写真だ。撮影したLionel Majzik氏は、この作品をナミビアの遠隔望遠鏡「Skygems Remote Observatories」を使用することで撮影したとのことだ。
NGC 6888 the Crescent Nebula by Bray Falls
この画像は、白鳥座にある三日月星雲の深部を写したもので、狼光星WR134から発生した衝撃波によるものとのことだ。光り輝く雲のようにも、宇宙に浮かぶクラゲのようにも見える、この世の物とは思えない幻想的な光景だが、宇宙では恐らくありふれた物なのだろう。
Rosette Nebula Core Region (NGC2244) by Alpha Zhang
NGC 2244は、バラ星雲の中に位置する散開星団である。作者が衝撃を受けた狭帯域撮影での作品をイメージしてフィルター処理した作品とのことで、よく見る星団の写真とはまた違った幻想的な雰囲気だ。
IC1871: A little devil riding on the head of a dragon by Binyu Wang
この画像は、魂星雲 (IC 1848) とその中心部 (IC 1871) を示している。魂星雲は、カシオペア座にある輝線星雲である。IC 1871 は、まるで竜の頭に乗った小悪魔のようで、果てしない星の海を見下ろしている。魂星雲の東側には、ハート星雲 (IC 1805) と呼ばれる星雲・星団のコンプレックスがある。これらを合わせて「ハート&ソウル」と呼ばれることもある。
Hydra’s Pinwheel by Peter Ward
「南の回転花火銀河」として知られる“うみへび座”の渦巻銀河M83。この画像は、水素アルファ線とカラーデータを組み合わせて、この美しい棒渦巻銀河のルビーのような星形成領域を浮き彫りにしている。
An Icelandic Saga by Carl Gallagher
アイスランドのウェストフィヨルドにて、ガルドゥール号という難破船とオーロラを収めた作品。1回の露光で撮影されており、何枚かの写真をブレンドした物ではないとのことだ。雲が少しかかっているが、それがまたオーロラとあいまって幻想的な雰囲気を醸し出した作品となっている。
Badwater Milky Way by Abhijit Patil
デスバレー国立公園内にある、バッドウォーターの塩田にて撮影された天の川の写真だ。この塩田は不思議なことに、毎年冬になると新しい雨水が流れ込み、凍結・融解・蒸発を繰り返すことによって、泥の中に六角形の模様が生まれるという。天の川が現れるまで待ち、前景の写真をまずは日が沈む前の薄暗い時間に撮影し、その後天の川が出現してから300秒の露光時間をかけて撮影した画像とを重ね合わせて作られた作品となる。
The starry sky over the world’s highest national highway by Yang Sutie
中国・チベット自治区シャンナン市に位置する標高は7,538メートルの山、クラ・カングリ。手前に写るのは、標高約5,400mに位置するのが国道219号線であり、世界で最も標高の高い高速道路だ。この人工物と自然の驚異とも言える天の川の共演が美しい作品だ。
Aurora Sherbert by MaryBeth Kiczenski
米国ウィスコンシン州米フィールドにて撮影されたオーロラの様子だ。2021年11月3日から4日かけては、太陽嵐の影響で各地でオーロラが見られたようだが、これもその際に撮影された。水たまりにうつるオーロラがまた美しい。
Equinox Moon and Glastonbury by Hannah Rochford
合成写真と言われることもあるようだが、これは実際の光景を切り取った写真似すぎない。こつは、“超望遠レンズ”を使っていることだ。この写真は、CANONのEOS 5D Mark IIに600mmの超望遠レンズを取り付けてこの塔から数キロ離れたところから撮影したという。望遠レンズによる圧縮効果でこのような不思議な光景が切り取られたわけだ。
Riverside of Funakawa in spring by Takanobu Kurosaki
最後にご紹介するのは、日本人の作品だ。富山県下新川町の280本に及ぶソメイヨシノを月明かりが優しく映し出す様子がこの世の物とは思えない美しさを放っている。
Sources
- Royal Museum Greenwich : The world’s greatest space photography
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