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フィンランドのアールト大学とユヴァスキュラ大学の研究者の共同研究により、世界で初めて、量子もつれ状態の電子の間にできる準粒子“トリプロン”の振る舞いを追跡することに成功した。トリプロンは、従来の磁性材料では形成されず、研究するのが非常に難しい。研究者らはこの実験のために、フタロシアニンコバルト分子を用いて従来の磁性材料とは異なる珍しい磁気特性を持つ人工量子物質を作成し用いることで、実空間測定を使って初めてトリプロンを検出することができたとのことだ。

準粒子は本物の粒子ではない。特定の相互作用の中で形成されるが、その相互作用が続く限り、粒子のように振る舞う。この場合の相互作用とは、2つの電子のもつれである。このペアは一重項状態でも三重項状態でももつれ合うことができ、トリプロンは後者の相互作用に由来する。

トリプロンを得るために、研究チームはフタロシアニンコバルトという小さな有機分子を使った。この分子が興味深いのは、フロンティア電子を持っていることだ。フロンティア電子とは、最もエネルギーの高い軌道上の電子のことである。

研究チームは、これらの分子を非常に小さな空間に詰め込み、フロンティア電子を強制的に相互作用させた。外から見ると、電子がトリプロンとして作用し、共同動作しているのがわかる。

アールト大学のRobert Drost助教授は、「非常に単純な分子構成要素を用いることで、これまでにない方法でこの複雑な量子磁石を設計し、プローブすることができました。孤立した原子の磁気励起は、走査型トンネル分光法を用いて長い間観測されてきましたが、伝播するトリプロンを用いて観測されたことはありませんでした」と、この研究の意義を説明する。

この種の準粒子は、巧妙なセットアップによって作られる必要がある。そのため、準粒子が発生し、測定可能な形で相互作用できるような人工的な材料を開発する必要がある。

「これらの材料は非常に複雑です。非常にエキサイティングな物理を与えてくれますが、最もエキゾチックなものは見つけるのも研究するのも困難です。そこで私たちは、個々の構成要素を用いて人工物質を作ることで、これまでとは異なるアプローチを試みています」と、研究著者であるアールト大学原子スケール物理学研究グループのPeter Liljeroth教授は付け加えた。

フタロシアニンコバルト分子をこのように強制的に結合させることで、研究チームは人工材料を作り出した。これを用いて、トリプロンが分子ネットワークを横断できることがわかった。この中を量子もつれ波が移動し、それを測定することができたのだ。

「私たちは、人工的な物質でエキゾチックな量子磁気励起を作り出せることを示しました。この戦略は、量子技術の新たな可能性を開く材料プラットフォームを合理的に設計できることを示しています」と、研究著者であるアールト大学のJose Lado助教授は付け加えた。

彼らは、より単純な構成ブロックを使い、より複雑な系へと進むことで、研究者たちは量子物質における創発的な振る舞いを理解することを期待しており、このアプローチを使って、より複雑な構成要素を持つ新物質を作ろうと計画している。これは、量子物質におけるよりエキゾチックな磁気励起の研究に役立つ。このアプローチは、複雑な物理学の理解に役立つだけでなく、新しい量子材料を設計するためのプラットフォームとしても役立つと期待されている。


論文

参考文献

研究の要旨

量子磁石は、複雑な量子多体現象を探求するための強力なプラットフォームを提供する。その一例がトリプロン励起であり、伝搬する一重項-三重項遷移から現れるエキゾチックな多体モードである。われわれは、有機分子から最小限の量子磁石を作製し、走査型トンネル顕微鏡と分光法を用いて、一次元および二次元集合体において分散型トリプロンモードが出現することを実証した。この結果は、実空間測定による分散型トリプロン励起の最初の実証となる。

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