今年10月と11月に行われた2つの別々の研究により、量子テクノロジーの研究において世界で初めて「量子時間反転」の実証に成功した。つまり、“光が時間的に前進と後退を同時に行っているように見える”という、非常に奇妙な状態を実現したのだ。
1つは、Yu Guo氏を中心とするグループによる “Experimental demonstration of input-output indefiniteness in a single quantum device“というタイトルの研究だ。
もう一つは、Teodor Strömberg氏が率いる国際チームによるもので、”Experimental superposition of time directions“となる。どちらの研究もプレプリントサーバーのarXiv.orgで公開されており、まだ査読前となる。
研究グループは、特殊な光学結晶を使って光子を分割し、時間の前後で存在させる「量子時間反転」に成功した。
これは、量子力学の原理である「量子重ね合わせ」と「電荷・パリティ・時間反転(CPT)対称性」の融合によって実現したもので、どちらも原子や素粒子の物理的性質を記述するものである。
「量子重ね合わせ」は、微小な粒子が観測されるまで複数の異なる状態で存在する現象であり、後者の「CPT」は、粒子を含むあらゆる系が、電荷、空間座標、動きを正確に反転させても、同じ物理法則に従うとする原理である。
シュレーディンガーの猫の思考実験が有名だ。この実験では、仮想の猫が、その生命が、観察されるまで起こったり起こらなかったりするランダムな素粒子事象に支配されているため、生きていると同時に死んでいるとみなされるのである。
この実験では、光の粒子である光子を重ね合わせ、時間的に前にも後ろにも移動できるようにした。結晶の中で光子を2つの経路に分割して重ね合わせるのだ。そうすると、重なった光子は結晶の中を規則正しく動くが、もう一つの経路では、光子の偏光(空間のどこを指しているか)を変えて、あたかも時間を逆行するように動くのだ。
次に、重ね合わせた光子を別の結晶の中を移動させ、再結合させた。そして、光子の偏光を測定したところ、量子干渉パターンを発見した。このパターンは、光子が両方向に移動している場合にのみ発生する、明暗の縞模様である。
量子時間反転は将来の応用に役立つ可能性がある
今回の研究成果により、時間反転を可逆論理ゲートと結びつけて、両方向の同時計算を可能にすることが示されたため、量子コンピューターでより高度な処理ができるようになるかもしれない。研究者によると、今回の量子時間反転の達成は、量子重力の統一理論をより深く知るための大きな一歩となるとのことだ。また、将来的に世界中で使用される量子コンピュータの開発にも役立つ可能性があるとしている。
量子テクノロジーは、現在の世界において非常に重要であり、特に研究者たちは、量子科学がもたらす進歩に人々がアクセスできるような未来につながる可能性のある能力を研究することに力を注いでいる。
特に最近、量子インターネットプロジェクトでは、接続されていない2つのノード間で情報を送信することに初めて成功している。この研究は、大容量のデータを無線で瞬時に転送できる、新しいネットワーク接続を一般に提供することを目的としている。
量子テクノロジーの異業種への応用は、特にこれを根底から大きく改善することができるため、現在、大きな支持を集めている。その可能性のあるアプリケーションの1つは、科学的進歩が利用できるようになったときに病気を診断できるヘルステックやケア産業が考えられている。
論文
- arXiv.org:
参考文献
コメントを残す