ウプサラ大学とFirst Solar European Technology Centerの共同研究の成果として、CIGS(銅、インジウム、ガリウム、セレン化物)薄膜太陽光発電セルによる発電効率で、23.64%という世界新記録を達成した事が報告された。
クリーンエネルギー開発で現在最も普及し注目されているのは太陽光発電だが、現在メインのシリコンセルは発電効率の問題や、そもそもの製造に大きなエネルギーを要することから、近年ではペロブスカイトが注目されている。
ペロブスカイトソーラーセルの発電効率は近年大きな改善を見せているが、その寿命はまだ疑問の残るところであり、一部の研究者らは別のアプローチも選択肢として提示したいと考えている。
また、異なる種類の太陽電池を積層することで、単独の太陽電池では達成できない発電効率を得られる事もまた、様々な種類の太陽電池を研究する動機となっている。
CIGSは、銅、インジウム、ガリウム、セレン化物の頭文字をとったもので、CIGS太陽電池は、通常の窓ガラスでできたガラスシートにいくつかの異なる層をコーティングした薄膜で構成される。
それぞれの層には特定の役割がある。太陽光を吸収する材料は、銅、インジウム、ガリウム、セレン化物(頭文字をとってCIGS)で構成され、銀とナトリウムが加えられている。この層は実際の太陽電池では、金属モリブデンのバックコンタクトと透明なフロントコンタクトの間に配置される。太陽電池の電子分離効率をできるだけ高めるため、CIGS層はフッ化ルビジウムで処理される。ナトリウムとルビジウムの2つのアルカリ金属間のバランスとCIGS層の組成が、変換効率、すなわち太陽電池内で電力に変換される完全な太陽光スペクトルの割合の鍵となる。
世界記録として登録されるためには、独立した測定が必要であり、今回は測定機関であるFraunhofer ISEが実施した。
「我々の研究は、CIGS薄膜技術が太陽電池単体として競争力のある代替技術であることを示している。この技術はまた、タンデム型太陽電池のボトムセルなど、他の文脈でも機能する特性を持っています」と、この研究の責任者であるウプサラ大学のMarika Edoff教授は言う。
今回のウプサラ大学の記録は23.64%と、CIGSでの発電効率では記録的なものだが、シリコンの27.6%、ペロブスカイトの26.1%にはまだ及ばない。
しかし、CIGSがシリコンの効率を上回る必要はない。異なるセル技術は、地球に届く太陽光のスペクトルの異なる部分を捕捉するのに最適なのだ。タンデム型太陽電池は、より長い波長に対しては比較的透明な層を上に配置し、その下に赤色光を捕捉するのに適した層を積層することで、単層セルよりも効率が高い発電が望める。現在、ペロブスカイトとシリコンのタンデム型太陽電池において、中国のLONGiが33.9%と言う高い発電効率の記録を保持している。
「我々の研究は、CIGS薄膜技術が単体の太陽電池として競争力のある代替技術であることを示している。この技術はまた、タンデム型太陽電池のボトムセルなど、他の用途でも機能する特性を持っています」とEdoff氏は語った。CIGSの高い信頼性は、他のいくつかの候補よりも有利である。
必然的に、タンデム型セルは単位面積あたりのコストが高くなり、現在では単位エネルギーあたりのコストも高くなっている。そのため、人工衛星への電力供給など、コストよりも効率がはるかに重要な場合にのみ使用される。しかし、複数の技術で改善が続けば、タンデム型、あるいは3倍、4倍のセルがもっと普及する可能性もある。
論文
参考文献
- Uppsala Universitet: Uppsala University sets new world record for CIGS solar cells
研究の要旨
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