New York Times紙の報道によると、米国内国歳入庁(IRS)は、米国の富裕層を効果的に監視する方法を模索するなか、数十億ドル規模のパートナーシップにおける脱税に取り組むため、人工知能(AI)を採用し始めたようだ。
この新しいテクノロジーは、ヘッジファンド、プライベート・エクイティ・グループ、不動産投資家、大手法律事務所に関わる税務案件を簡素化し、税務当局がより適切に対処できるようにするものだ。
複雑なケースの解明
IRSのDaniel Werfel長官はブリーフィングで、「これらのケースはI.R.S.のチームにとって複雑なものです。IRSにはパートナーシップに対処するための十分なリソースや人員がまったくありません。本当の意味で、我々はこの分野で何年も圧倒されてきました」。
AIは、取引記録を含む膨大な財務データを分析し、不正や脱税を示す傾向や異常を発見するために使用することが可能だ。手作業によるアプローチと比較すると、機械学習アルゴリズムは、税務当局が不正や可能性のある税務犯罪を特定するのを支援するのに適している。
さらに、過去のデータ、行動パターン、その他の適切な特徴に基づいてリスクの高い納税者や企業を特定することで、AIは脱税の可能性を予測するために使用することも出来るのだ。これにより、税務当局は執行努力をより集中させることができる。
また、なりすまし、虚偽の還付請求、その他税務関連の不正行為も、AIを活用した不正検知システムによって検知することができる。
最後に、自然言語処理技術を使用して、法律文書や税務規則などのテキストデータを分析し、コンプライアンスを向上させ、納税者が適切な規則に従っていることを確認することができる。
プライバシーとデータ・セキュリティに関する懸念
多くの有用な用途があるにもかかわらず、税務執行におけるAIの使用は、プライバシーとデータ・セキュリティに関する懸念を引き起こす。また、公正かつ公平な手続きの執行を脅かす可能性もある。
Americans for Taxの創設者であり会長であるGrover Norquist氏は、New York Times紙に対し、IRSは税法に関する困難をアルゴリズムのせいにしてきた歴史があると語った。彼は、AIを使うことは、政治的偏見や不平等な執行手続きという立証された主張から自らを守るために、IRSが武器として持っているもうひとつの戦術に過ぎないと主張した。
「これは、彼らが意思決定に距離を置くためのもうひとつの方法です。彼らは、『私たちは嫌いな人たちを監査しているわけではない。これは科学なんだ』と言うことができるのです」。
この新しいイニシアチブは、インフレ削減法によって昨年IRSに割り当てられた800億ドルによって賄われる。このプロジェクトは、脱税者や、納税を免れるために巧妙な会計処理をしている人々を追及することで、IRSが連邦歳入を増やすのを支援することを目的としている。
「このニュースは、富裕層が税金をほとんど払わず、中流階級の納税者にツケを払わせるという、これまで通りのビジネスを続けさせようとする下院共和党のアプローチとは対照的である」と、New York Times紙上院財政委員会委員長のRon Wyden上院議員(オレゴン州)は語った。
Source
- The New York Times: I.R.S. Deploys Artificial Intelligence to Catch Tax Evasion
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