トヨタ自動車は、1回の充電で航続距離1,000km以上の走行を実現する、新型電気自動車用バッテリーの開発に取り組んでいることを明らかにした。また、既存のリチウムイオン電池の技術を改良し、急速充電と航続距離の延長を実現する計画もある。この2つの計画は、トヨタがこれまではあまり大きく取り上げてこなかった電気自動車への取り組みを強化することを意味するものだろう。
全固体電池に関するブレークスルーを達成
イベントでは、トヨタの幹部が数名登壇し、開発中のコンセプトを交えながら、トヨタの今後のEV技術戦略について説明し、EVの遅れに対する懸念を払拭した。
政府や投資家はトヨタにBEV(バッテリー電気自動車)への全集中を促しているが、トヨタは、BEV、PHEV、HEV、燃料電池車(FCEV)を含む複数戦略に取り組んでいる。だが、これに関してはトヨタの選択は賢明と言える。BEVは街乗りや個人用途には向くかも知れないが、物流に用いられるトレーラーのような大型車両ではバッテリーが巨大化する事による積載量の低下や、充電時間の面でデメリットが大きい。これに対する理想的なソリューションとして、水素を用いる燃料電池車の開発を進めている企業も多く、バッテリーに用いられるリチウムの供給不足懸念もあり、BEVにのみ集中するという戦略については各社見直しが迫られているところだからだ。
トヨタ自動車の新たな技術ロードマップは、面目を保つための試みかもしれないが、それにしても注目すべきものである。同社は次世代EVをサポートするために、以下を含むいくつかの新機軸を明らかにした:
- コスト削減のための製造技術向上
- 空気力学を強化する極超音速技術
- 固体電池を含むEVバッテリー技術
- EVの商品力を向上させるための根本的な変更
特に注目すべきは、次世代のバッテリーとされる「全固体電池」の耐久性を高める「技術的ブレークスルー」を達成したと述べている点だ。全固体電池は、従来の液体電解質電池(リチウムイオン)よりもエネルギー容量が大きく、温度に影響されにくい。また、充電速度も速いため、コストと長期的な耐久性が改善されれば、BEVの問題であった航続距離の問題を解決する救世主ともなり得る。これにより、トヨタ自動車は1,000kmの航続距離が可能と述べており、2027年から2028年までに実用化することを目指すとのことだ。
トヨタは、将来のEVの収益性を確保するために、ギガキャストによるシンプルでスリムな車体構造を取り入れるとしている。これは、テスラが採用しているプロセスで、車を作るのに必要な部品数を減らすことで製造を簡素化するものだ。
また、トヨタは、大量生産された自動車が独立して組立ラインを移動することを可能にする自走式組立ラインなどの技術も統合する。
トヨタは、これらの投資を通じて、量産EVの生産リードタイム、生産工程、工場投資を50%削減し、大幅な固定費削減を目指します。
日本の自動車メーカーは、ロケットに使われる極超音速技術のような抵抗を減らすことができる新しい技術を、EV用に研究している。トヨタによると、三菱重工業の宇宙システム部門と共同でイノベーションを模索しているとのことだ。
一方、トヨタはリチウムイオン電池を改良してEV戦略を強化する計画だ。トヨタは2026年と2027年に、パフォーマンスと普及型の2種類の次世代バッテリーを提供する。パフォーマンスは、電気SUV「bZ4X」と同じリチウムニッケルコバルトマンガン(NCM)電池を使用するが、20%のコスト削減で走行距離を20%向上させることが出来る。
普及型では、リン酸鉄リチウム(LFP)バッテリーを使用し、最初の電気自動車モデルに比べ、走行距離も20%増加するが、コストは40%削減できると予想される。
その「さらなる進化」には、バイポーラ構造と高ニッケル正極を組み合わせた高性能バッテリーが含まれ、航続距離を10%伸ばし、コストを20%削減し、20分以内の急速充電(10%から80%)を実現する。
また、トヨタは、モーター、ギア、トレイン、インバーターなどのEV主要部品を小型化し、「小型eAxle」を採用することで、航続距離と空気抵抗を低減する計画だ。また、次世代SiCウエハーにより、電力損失を50%低減し、EVのエネルギー消費を改善することを目指している。
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- トヨタ自動車:
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