画期的な太陽光発電技術「ソーラーリーフ」コンセプトは高効率な発電と淡水の精製を可能にする

masapoco
投稿日
2023年8月25日 12:20
solar leaf

イギリスの研究者たちが、生物学的な着想と太陽光発電技術を融合させた「ソーラーリーフ」のコンセプトを開発した。葉のような形状、蒸散機能、余分な熱エネルギーを利用する能力を持つこのシステムは、平均的な太陽電池よりも多くの太陽光を取り込み、電気出力を飛躍的に向上させる可能性がある。

太陽光発電では、太陽電池で太陽光を受け止め、これを電気に変換する。これは光起電力(PV)セルを使って行われ、光子(光の粒子)が原子から電子を引き離す。セルの構造上、電子は一方向にしか移動できないため、電流を作り出し、バッテリーや電化製品の駆動に利用される。

これまでの太陽電池はそれほど効率的ではなく、太陽エネルギーの10~25%が電気に変換されるのみだ。実験室レベルでは30%を越える変換効率も達成されているが、まだ実用化はされていない。これは、太陽電池が太陽光スペクトルの一部しか利用できないためである。そして、電気として変換されなかった太陽エネルギーは廃熱として放散され、セルの動作温度を上昇させる。セルの温度が上がると、変換効率は低下し、更に「老朽化」を早める傾向がある。

PVセルを冷却する1つの方法は、能動的な熱管理方法を採用することだ。これは水流や空気流によって熱を除去することで実現する。だが、そのために熱交換構造および/または冷却のための水力構造を必要とするため、構造自体が複雑になる可能性がある。これはコストを増加させるだけでなく、冷却機構を動かすために余計なエネルギーを必要とすることにもつながる。受動的な熱管理方法を使用することもできるが、単純である反面、効率は良くない。

ソーラーパネルの問題を軽減する「ソーラーリーフ」

インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究者らが考案した「ソーラーリーフ(別名PV-leaf)」の構造と追加機能は、これらの問題を軽減するとのことだ。このシステムは従来の受動的な冷却機構を大きく上回る効率を実現する「ポンプなしの “ハイブリッド”ソーラーコレクター」として機能するという。

植物の葉は驚くべき構造をしている。多くの異なる層と構造を持っており、これによって根から葉に水を移動させることができる。蒸散は、葉を涼しく保ち、光合成ができるように機能させるのに役立っている。

PV-leafは、この蒸散プロセスを模倣したものだ。コンセプトでは、積み重ねられたヒドロゲルセルと竹繊維が、水タンクから太陽電池へと水を受動的に移動させる。繊維が枝分かれしているため、水がセル全体を冷却する。この冷却方法により、太陽熱による加熱を最大75%まで緩和し、動作温度の上昇によるPV-leafの効果低下を防ぐのだ。その結果、PV-leafは従来の太陽電池よりも最大13.2%も高い発電効率を実現するという。

「この革新的な葉っぱのようなデザインを導入することで、世界的なエネルギー転換を促進することができ、同時に、エネルギーと淡水の増加という2つの差し迫った世界的な課題に対処することができます」と、クリーン・エネルギー・プロセス研究所の責任者であるChristos Markides教授は声明で述べた。

さらに、PV-leafのコンセプトには新しい能力が組み込まれている。太陽エネルギーの熱を利用して淡水と熱エネルギーを生産するのだ。生理食塩水を使ったテストでは、システムの蒸散プロセスできれいな蒸気が発生し、これを淡水に変えることができた。凝縮プロセスでは、“低品位”の熱エネルギーが生成され、「家庭内の暖房や温水の予熱に利用できる」と研究者たちは述べている。実用化されれば、PV-leafシステムは、電気、淡水、熱エネルギーの生産に自由に調整できると研究者たちは考えている。

ただし、PV-leafは現在のところコンセプトだ。システムの背後にある技術は研究室(の屋根)でテストされているが、研究者たちが理想とするレイアウトはまだ実現していない。実際に街路樹の代わりにソーラーリーフが姿を現すまでにはまだしばらく時間がかかる事だろう。


論文

参考文献

研究の要旨

商業用太陽光発電パネルに入射する太陽エネルギーの大部分(70%以上)は熱として放散され、動作温度を上昇させ、電気性能の著しい劣化につながる。商業用太陽光発電パネルの太陽光利用効率は、通常25%以下である。ここでは、環境にやさしく、低コストで広く入手可能な材料で作られたバイオミメティック蒸散構造を採用し、効果的なパッシブ熱管理とマルチ発電を実現するハイブリッド・マルチジェネレーション太陽光発電リーフのコンセプトを実証する。バイオミメティックな蒸散構造により、太陽電池セルから590W/m2の熱を除去し、1000W/m2の放射照度下でセル温度を26℃低下させ、電気効率を13.6%向上させることができることを実験的に実証した。さらに、太陽光発電の葉は、回収された熱を相乗的に利用して、同じ部品内で追加の熱エネルギーと淡水を同時に共同生成することができ、全体的な太陽熱利用効率を13.2%から74.5%以上に大幅に高め、1.1 L/h/m2以上のきれいな水を得ることができる。



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