極寒の冬の状況は、電気自動車にまつわる欠点の1つを露呈する結果をもたらしている。
イリノイ州シカゴ郊外のオーク・ブルックでは、気温が氷点下を大きく下回ることが日常茶飯事だが、地元メディアは、公共の充電ステーションが「車の墓場」と化していると報じた。
「何もない。まだ充電は0%だ。昨日も今日もここに3時間もいるのにです」と、Tesla車のオーナーであるTyler Beard氏は語った。
地元ニュース局Fox 32の報道によって、シカゴのスーパーチャージャーで電力が供給されず充電できないTesla車が列をなしている事が報じられている。ウィンディ・シティーのスーパーチャージャー・ステーションには何十台もの車が列をなして放置されていたという。
Tesla車の所有者らは、車両に電源を接続しても充電を開始できないと報告している。そのうちの何人かは、車両を地元のTeslaサービスセンターまでレッカー移動してもらったという。
「これはクレイジーだ。災難だわ。マジで」と、同じくTeslaオーナーのChalis Mizelle氏は語っている。
このニュースは、電気自動車の目に余る欠点を浮き彫りにしている。問題はTeslaだけではない。EVのバッテリーは氷点下では消耗が速くなり、性能に大きな影響を与える。
では、なぜこのようなことが起こるのか?問題は、バッテリーの基本が凍結状態ではうまく機能しないことだ。EVバッテリー内のイオンは、液体の電解液を通してプラスとマイナスの電極間を移動する。寒くなると、少なくともほとんどのリチウムイオン電池では、その液体が濃くなり、イオンの移動速度が遅くなる。イオンの動きが遅くなればなるほど、抵抗は大きくなる。抵抗が大きければ大きいほど、電気自動車の電力損失は速くなる。
シカゴ自動車工業会のMark Bilek氏は、ドライバーは必要な手順を踏んでいないと述べている:「どんな新しい技術でもそうですが、人々には学習曲線があります」と彼はFox 32に語った。「プラグ・アンド・ゴーではありません。つまり、バッテリーを急速充電に最適な温度にする必要があるのです」。
Teslaは特に寒い環境ではそうすることを推奨している。車のナビゲーション システムのスーパーチャージャー ステーションに入ると、バッテリー パックのプレコンディショニングが自動的に行われる。
しかし、実際はそんなに単純ではない。プリコンディショニングはバッテリーを消耗させる。解決策はバッテリーを保温することだが、その熱はバッテリー自体から発生するため、Teslaのドライバーはバッテリーを充電するためだけにバッテリーを消耗させていることになる。
科学者たちはこの問題に取り組んでいる。例えば、South 8 Technologiesは、「圧力下で液化し、-60℃から60℃の広い動作温度範囲など、いくつかの安全性と性能上の利点を可能にする」「液化ガス電解質」を提案している。一方、韓国のLG Chemは、充電時間と温度性能の向上を視野に入れ、新しい電極化学とアーキテクチャーを開発している。Teslaもバッテリー技術の開発を試みているが、次世代4680セルの量産は難しいことが判明している。
ただし今回の件は、そもそもがバッテリーの問題だけではなく、充電ステーション側にも問題があるのかも知れない。
急速に普及してきている電気自動車だが、EVバッテリーの技術はまだ初期段階にあることを思い知らされる。必要な改良が実用化されるまでには何年もかかるかもしれないが、それまでは寒冷地での利用は推奨されないという事は覚えておくことが良いかも知れない。
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