メタサーフェスを使い、従来と全く異なる方法で光子の量子もつれを生成することに成功

masapoco
投稿日 2022年9月16日 10:32
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ドイツのマックス・プランク光科学研究所フリードリヒ・アレクサンダー大学エルランゲン=ニュルンベルクの科学者は、アメリカのサンディア国立研究所と共同で、量子もつれ(量子エンタングルメント)にて従来の生成方法で問題となっていた点を克服した、あらたなもつれ光子対の生成方法を考案したとのことだ。

研究者らは、通常よりもはるかに単純なセットアップを使用して、量子もつれ光子の網を生成する方法を開発した。鍵となるのは、紙の 100 分の 1 の薄さの正確にパターン化された表面であり、これまで必要とされていた、巨大な光学機器を置き換える事が出来るという。

量子もつれとは、2 つの粒子が絡み合い、一方を操作すると、相手がどんなに離れていても(例え宇宙の両端にいたとしても)即座に相手に影響を与えるという、非常に奇妙(だが実際に存在する)現象だ。これは、量子コンピューティングや量子暗号などの新しいテクノロジーの基礎を形成している。

量子コンピュータなどを実現するにあたり、量子もつれ状態の粒子を生成する必要があるが、その中でよく用いられるのが「光子」だ。光子を用いた量子コンピュータは、他の方式で必要とされる冷凍・真空装置が不要であることなど、固有の利点があり、日本の大学などでも研究が盛んに行われている。ただ問題は、絡み合った光子のグループを生成するのが難しい場合があり、通常、大規模なレーザー装置、特殊な結晶、およびその他の光学機器が必要とされている。しかし今回、サンディアとマックス プランクのチームは、はるかに単純なセットアップで実現した。これに用いられるのが、メタサーフェスだ。

メタサーフェスは、レンズのようなもので、光やその他の電磁波と、従来の材料ではできないような相互作用をする合成材料のことである。例えば、通過する光を非常に細かく制御された方法で操作することができる。サンディア国立研究所の上席研究員であるIgal Brener氏によると、メタサーフェスは従来のレンズよりも場所を取らず、光に対してより多くのことができるため、商業産業界はメタサーフェスの開発に躍起になっているという。

「レンズや厚い光学素子をメタサーフェスで置き換えることができるようになりました。このようなメタサーフェスは、消費者向け製品に革命をもたらすでしょう。」とBrener氏。

メタサーフェスは、曲面や厚みを利用して光を制御するのではなく、ナノスケールの構造を利用して光を制御する。これにより、原子の捕捉、画像の鮮明な色の取り込み、さらにはホログラムの生成など、目の前の課題に応じて光を変化させることができるのだ。そして何より、メタサーフェスは、従来の技術よりもはるかに小さなデバイスで、光もつれを実現させることが出来ることが判明した。

今回、研究チームは、半導体材料であるガリウムヒ素(GaAs)で構築されたナノ構造で覆われた極薄のガラスをメタサーフェスとして使用した。このメタサーフェスにレーザーを照射すると、一部の光子がもつれ合いながら反対側に出てくるしかも、一度に1組だけでなく、絡み合った光子が網の目のようにつながって出てくるのだ。研究チームによると、従来では、これを実現するには、研究室全体が機材でいっぱいになってしまうのだという。

「このマルチエンタングルメントが2~3組以上必要な場合は、かなり複雑で、一種の難題です。これらの非線形メタサーフェスは、以前なら信じられないほど複雑な光学的セットアップを必要としたこのタスクを、本質的に1つのサンプルで達成しています。」と、サンディア国立研究所の上席研究員であるIgal Brener氏は述べている。

一度に複数の光子群に量子もつれを引き起こすことができるようになれば、量子コンピューター、暗号化、通信、光学など、幅広い応用が可能になるかもしれない。ただし、そうなる前に、メタサーフェスの効率を向上させるために、まだやるべきことがあると研究チームは述べている。



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