死後1時間経過した豚の臓器を部分的に回復させることに成功 – 臓器移植の可能性を広げるが倫理的な課題も

masapoco
投稿日 2022年8月8日 12:18
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イェール大学の研究グループは、死後1時間経過した豚の重要な分子および細胞機能を回復させることができる新しいシステムを開発したことを発表した。実験では、酸素の喪失による組織損傷の一部を回復できることが示され、臓器移植の可能性を広げるとともに、心臓発作の新しい治療法につながる可能性もあるとしている。

心臓が停止すると、臓器への酸素や栄養の供給が途絶え、数分以内に細胞死や組織の損傷が始まるが、通常はほとんど元に戻らないと考えられている。そのため、臓器は劣化が早く、移植に適さないことが多く、世界的に臓器不足が問題になっている。個々の臓器を保存する方法もあるが、究極の目標は全身の循環を回復させ、一度にすべての臓器を保存することだ。

今回、研究者たちは、まさにそれを実現するためのブレークスルーを実現した。彼らはまず、BrainExと呼ばれるシステムを開発し、死後4時間も経過した豚に脳の一部の機能を回復させることに成功した。これは2019年に実証されている。

OrganExと名付けられた新しいシステムは、基本的にそのBrainEXを発展させたものだ。この機械は動物の自然循環系に接続され、血流が止まった後に起こる代謝と電解質の不均衡を打ち消すように特別に設計された液体を送り込む。

研究チームは、このBrainEXシステムをブタでテストし、体外式膜型人工肺(ECMO)として知られる既存の循環回復技術と比較した。(ちなみにこのECMOは恐らく新型コロナウイルス感染症のパンデミック初期に、重症患者の最後の治療に用いられる器具としてテレビ等で報道されていたことからご存じの方も多いだろう。)心停止から1時間後にブタにECMOを接続し、その後6時間、回復液で循環させた。

OrganEx治療を受けたグループは、ECMO治療を受けたグループよりもはるかに高い組織完全性を示し、細胞死、出血、組織の腫れが減少した。さらに驚くべきことに、心臓、脳、肝臓、腎臓など、OrganEx治療を受けたブタのいくつかの臓器で、いくつかの重要な分子および細胞プロセスが復元されたのだ。遺伝子発現パターンは、体内で何らかの修復プロセスさえも起きていることを示した

この研究の著者であるZvonimir Vrseljaは次のように述べている。「顕微鏡で見ると、健康な臓器と死後にOrganEx技術で処理された臓器の違いを見分けるのは困難でした。」

研究チームは、処置中に正常な脳機能に関連する電気的な脳活動が検出されなかったことを指摘しており、豚がゾンビになるという懸念も払拭されたそうだ。

研究チームは、この画期的な成果により、哺乳類の身体は血流の途絶えから、これまで考えられていたよりもはるかに回復しやすいことが明らかになったとしている。この技術の研究にはまだ多くの課題があるが、OrganExは移植用の臓器をより多く保存したり、心臓発作や脳卒中から回復するための新しい治療法につながったりする可能性があるとのことだ。



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