SF映画に登場するナノマシンは、環境中の物質を用いて無制限に自分自身のコピーを生み出し、指数関数的な増殖を見せる姿が描かれていたが、そんなSFのようなロボットを研究者らは生み出したようだ。
ニューヨーク大学、寧波慈渓生体機械工学研究所、中国科学院の研究チームは、数本のDNAから作られたプログラム可能なナノスケール・ロボットを実証した。このロボットは、他のDNAの断片をつかみ、それらを組み合わせて、自分自身のコピーを含む新しいUV溶接ナノマシンを製造することができる。
このロボットはわずか4本のDNA鎖を使って作られ、その大きさはわずか100ナノメートルとのことだ。
「ナノスケールの産業用ロボットは、製造プラットフォームとしての可能性を秘めており、ナノ材料を一貫した精度と正確さで取り扱い、製造するための反復作業を自動的に行うことができます」と、このプロジェクトの主任研究者であり、ニューヨーク大学物理学科と中国科学院のスタッフであるFeng Zhou氏は語った。
研究チームによれば、このロボットは、断片を2次元の形状に組み立てることしかできなかったこれまでの成果から大きく進展しており「多軸の精密な折り畳みと位置決め」を使って、「3次元とより多くの自由度にアクセスする」ことができるという。
このようなナノマシンは、薬物や酵素、その他の化学物質を体内の細胞内で製造する可能性があると考えられている。しかし、研究者たちは、これらの機械が”3次元構造と機能全体を自己複製できる”という事実を特に強調している。
NewScientistのインタビューで、ナノ材料を専門とする化学のAndrew Surman教授は、「この種のものを組み立てるのは厄介です……我々が作る合成物でも生体分子でも、ものがどのように折り畳まれるかは本当に重要です。折り畳み方が間違っていると、うまくいかないのです」。
ただし、ロボットは完全に自己完結しているわけではない。”プログラム可能”とはいえ、外部から制御された温度とUV光に反応して動作し、組み立て中のDNA断片を “溶接”するためにUV光を必要とする。
加えてもうひとつの問題は、必要なDNAの断片が十分に供給されなければ、自分自身のコピーを作ることができないという事実だ。
それでも、これはかなり信じがたい成果だろう。AIの進歩然り、我々はシンギュラリティの目の前まで来ているのかも知れない。
論文
- Science Robotics: Toward three-dimensional DNA industrial nanorobots
参考文献
- New Scientist: DNA nanobots can exponentially self-replicate
研究の要旨
ナノスケールの産業用ロボットは、製造プラットフォームとしての可能性を秘めており、ナノ材料を一貫した精度で取り扱い、製造するための反復作業を自動的に行うことができる。我々は、光学的に不活性な部分から3次元(3D)光学活性キラル構造を作製するDNA産業用ナノロボットを実証する。外部から制御された温度と紫外線(UV)を利用することで、100ナノメートル程度の大きさのプログラム可能なこのロボットは、さまざまなパーツを掴み、溶接できるように位置決めして整列させ、構築物を解放し、次の作業に備えて元の構成に戻る。私たちのロボットはまた、3次元構造と機能を自己複製することができ、3次元とより多くの自由度にアクセスするために折り畳みを使用することで、(2次元に制限された)シングルステップ・テンプレーティングを凌駕する。ナノ製造のためのツール/技術として、多軸の精密な折り畳みと位置決めを導入することで、より複雑で有用なナノ/マイクロ・デバイスへの扉が開かれるであろう。
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