量子レベルでの重力を測定することに成功、夢の「万物の理論」の構築に大きな前進

masapoco
投稿日
2024年2月24日 11:22
quantum

サウサンプトン大学の研究者らが、ミクロレベルで重力を測定する方法を発見し、神秘的な量子の領域における重力の性質を探るための基礎となる偉業を成し遂げた。

これはブラックホールの内部で何が起こっているのか、宇宙がどのように始まったのかと言った、人類が宇宙について抱いている多くの疑問に、これまで以上に近付く道筋を示す画期的な物であり、長年の懸案であった量子重力理論の形成につながる可能性を秘めている。

「今、我々はこれまで記録された中で最小の質量で重力信号の測定に成功しました。これは、重力と量子力学がどのように連動して働くかを最終的に実現することに一歩近づいたことを意味します」と、主執筆者であるサウサンプトン大学のTim Fuchs氏は述べている。

量子力学は、原子よりも小さなスケールで宇宙を記述する最良の方法を科学者に提供している。一方、Albert Einsteinrの一般相対性理論は、巨大な宇宙スケールにおける物理学の最良の記述をもたらす。しかし、両理論が100年にわたり豊富な実験的検証を経てきたにもかかわらず、これらは交わらない部分があった。

このジレンマの主な理由のひとつは、宇宙の4つの基本的な力(電磁気力、強い核力、弱い核力)のうち3つは量子論的に記述されているが、4つ目の力である重力については量子力学で記述出来ないことである。

ほぼ1世紀にわたって、物理学者たちは重力と量子力学の複雑な相互作用を理解しようと試みては失敗してきた。

Isaac NewtonからEinsteinに至るまで、多くの天才達が量子重力のとらえどころのない性質に取り組んでは失敗してきた。Einsteinは一般相対性理論の中で、「重力の量子版を示すような現実的な実験は存在しない」と述べてさえいた。

だが、科学者たちはついに新しい技術を使って微小な粒子に働く弱い重力の検出に成功した。研究者たちは、これが “量子重力”の理論につながる道への暫定的な第一歩になると考えている。

「量子重力を理解することで、宇宙の謎のいくつかを解明することができます。例えば、宇宙がどのように始まったのか、ブラックホールの内部で何が起こっているのか、すべての力をひとつの大きな理論に統合することなどです」とFuchs氏は述べている

この実験は、前例のないスケールで重力を測定する画期的なものであり、将来の量子領域への探求の基礎を築くものである。量子重力の探求は、我々の宇宙に関する基本的な疑問に答える鍵を握っている。

オランダのライデン大学とイタリアのフォトニクス・ナノテクノロジー研究所のフックスと同僚たちは、最新の研究で、小さな物体間に存在する極めて微妙な引力を測定する方法を考え出した。

振動による干渉を防ぐために厳重に保護された実験では、絶対零度の100分の1、つまり宇宙で最も冷たい温度である-273.15度まで冷却された超伝導体の上に浮遊させた磁性粒子を中心に行われた。そして、真鍮の重りを取り付けた自転車の車輪を1メートルほど回転させ、重りを粒子に近づけたり戻したりしながら、ホバリングしている粒子にかかるほとんど無視できる力を測定した。

この研究では、超伝導デバイス、磁場、高感度検出器、高度な防振技術などが複雑に組み合わされた。驚くべきことに、この研究では、絶対零度をわずかに超える温度で浮遊させた重さ0.43mgの粒子に対して、わずか30aN(0.0000000000003N)の引力を測定した。

これによって、このスケールの力がどのように働くのかを解明し、いわゆる「万物の理論」を可能にすることに、これまで以上に近づいたことになる。

研究チームの方法は、量子重力の測定に道を開くことになるだろう。将来的には、研究者たちはこの方法をさらにスケールダウンして、さらに小さな粒子を測定することができるようになると見ている。しかし、それには時間がかかる。最初の測定にはさらに5年から10年かかるだろうとFuchs氏は考えている。「これは、我々が実験によって探求する必要があることです。

サウサンプトン大学の物理学者Hendrik Ulbricht教授は、この研究の将来性を強調した。「重力や量子の世界についての新たな発見につながる可能性のある科学の限界に挑戦しています。粒子の振動を分離するために極低温と装置を利用する我々の技術は、おそらく量子重力の測定に道を開くでしょう」。

「これらの謎を解き明かすことは、最も小さな粒子から最も壮大な宇宙構造まで、宇宙の構造そのものについて、より多くの秘密を解き明かす助けとなるでしょう」と、Ulbricht教授は付け加えた。


論文

参考文献

研究の要旨

重力が他のすべての既知の基本的な力と異なるのは、それが時空の曲率として最もよく記述されるからである。そのため、量子論との統合には抵抗がある。重力相互作用は基本的に弱く、巨視的スケールでのみ顕著になる。つまり、量子効果が支配的な微視的領域で重力がどうなるのか、重力の量子コヒーレント効果が顕在化するのかどうかはわからない。メゾスコピック・サイズの浮揚力学系は、重力のプローブであると同時に、その運動状態の量子制御を可能にする。この領域は、重力系における量子重ね合わせと量子もつれの卓上実験の可能性を開くものである。ここでは、タイプIの超伝導トラップ内で浮遊させたサブミリメーター・スケールの磁性粒子と、約半メートル離れた場所に置いたキログラム・ソースの質量との間の重力結合を示す。この結果は、重力測定をアトニュートン程度の低い重力まで拡張し、浮遊させた機械センサーの重要性を強調するものである。



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