日本にもまもなく上陸する、Valveのポータブルゲーム機「Steam Deck」については、今年の8月に後継機の開発について、同社が明かしていたが、この度The Verge誌のインタビューに応じ、いくつかの具体的な改良点についてが明かされている。ただし、多くのユーザーが期待するゲームパフォーマンスの向上は見送られる模様だ。
Steam Deckの設計者であるPierre-Loup Griffais氏は、「もう少し長い間、一つの性能レベルを維持し、大きな利益が得られたときだけ性能レベルの変更を検討することを選ぶと思います」と、後継モデルではパフォーマンスの向上を考えていないことを明言した。
Valveとしては、その代わり、当面はNintendo Switchが有機ELモデルで行ったような改良、すなわちバッテリー寿命とディスプレイの品質の向上に的を絞っているようだ。コンピューティングアーキテクチャが大きく進化すれば、Valveは大規模なアップグレードを検討する可能性があるということだろう。
とはいえ、Steam Deck のカスタム設計されたAMD Aerith SoC(2.40~3.50 GHz の SMT 搭載 Zen 2コアを 4 個と 1.0~1.60 GHz で動作する RDNA 2 ベース GPU(512SP)を搭載)では、特に最近のゲームの多くはスムーズに動作しない。そのため、特にコアなゲームユーザーからは、より高性能なSoCを搭載したSteam Deckの登場を望む声も多い。
「今、すべてのSteam Decksが同じゲームをプレイできること、そして、ユーザーがプレイする際にどのようなパフォーマンスレベルを期待すればよいかを理解し、開発者が何をターゲットにすればよいかを理解するために、1つのターゲットを持つこと…この1つのスペックを持つことに大きな価値があります。」とGriffais氏は述べている。これは、任天堂やSonyなどが発売しているゲームコンソールに通じる思想だ。
実際、Valve社が次のSteam Deckで同じレベルのパフォーマンスを維持することに意味がある理由は数多くある。まず第一に、仕様の異なる2つのゲーム機が存在する場合、それぞれに異なるSteam Deck Compatibilityプログラムを実行する必要がある。第二に、ゲーム開発者は2つのハードウェア構成をターゲットにしなければならないため、市場投入までの時間が長くなり、コストも高くなる。第三に、第一世代のSteam Deckの所有者の中には、第二世代が発売されると取り残されたと感じる人も出てくるだろう。最後に、Steam Deckのコストを下げてハードウェアの利益を上げる方が、性能を高めてハードウェアで利益を上げないよりも、経済的に合理的である。また、Steam Deckが売れ続けている限り、同社が大規模なアップグレードを行う理由はほとんどない。
PCゲーマーは、当面Steam Deckのアップグレードがないことを快く思っていないかもしれないが、家庭用ゲーム機の世界では、ハードウェアの仕様を何年も安定させるのはごく一般的なことだ。例えば、任天堂は、より強力なNVIDIA SoCをベースにした「Switch Pro」の噂が何年も前から流れているが、Nintendo Switchが5年目に突入した中で行われた唯一のアップグレードは、より優れた有機ELディスプレイの採用だけだ。
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