量子コンピュータのスタートアップ企業であるSEQQCは、絶対零度に近い温度で動作する古典的なコンピュータチップを作成し、同様の低温条件で保管する必要がある量子プロセッサとの連携を可能にしたと発表した。
ニューヨークを拠点とする同社は、超伝導エレクトロニクス開発企業であるHypres社からスピンアウトし、2018年に設立された。量子プロセッサーと古典的なコンピューターを組み合わせた、量子コンピューティングのためのハイブリッドアーキテクチャの構築に注力している。
量子物理学に基づく量子コンピュータはまだ開発中だが、古典的なコンピュータよりもはるかに強力になり、現在利用できる最も強力なスーパーコンピュータよりも数百万倍速く計算を実行できる可能性があるとされている。
SEQQCは、量子コンピュータへのハイブリッドアプローチは、新薬の設計など、非常に特殊な作業負荷に対して大きな可能性を秘めていると述べている。SEQQCは、この量子/古典ハイブリッドコンピューティング技術によって、量子ビットと呼ばれる極めて不安定な量子ビットにエラーを引き起こすデコヒーレンス(周波数、運動、ノイズ、温度の変化)を劇的に低減できると述べている。
SEQQCが直面する課題のひとつは、量子プロセッサーを古典的なコンピュータを駆動する従来のチップと連携させることだ。量子プロセッサーは、0ケルビン(摂氏273.15度)に近い超低温で保管される極低温室でのみ効果的に動作するが、従来のコンピューターチップは、このような低温で動作させることが出来なかったため、これが、これらチップの連携の障害となっていた。
SEQQCの共同設立者で最高経営責任者のJohn Levy氏は、「量子プロセッサの情報は波形のまま測定され、古典コンピュータが量子ビットにアクセスし制御できるように、1と0にデジタル化する必要があります」と、Reutersに語った。これまで、量子コンピュータは、室温で動作する極低温室の外に置かれた古典的な機械に、ワイヤーを使って接続されていた。
しかし、この温度変化は、2つの機械間の通信を遅くするなど、多くの問題を引き起こす。SEQQCは、新しいデジタルチップを量子チップと一緒に極低温室内に置くことで、この問題を解決することを目指している。Levy氏は、「このような初期のプロトタイプの設計を、総当たりでスケールアップしようとするだけでは不十分です」と、今回同社が達成した事の意義について説明する。
SEQQCの新しいチップは、自社の製造工場で製造された。シリコンウェハーの上に作られているが、通常のチップのようにトランジスタを使用していない。量子プロセッサーの真下に設置し、量子ビットをよりよく操作し、量子ビットが生成する情報を読み取ることができる。
Levy氏によると、同社は他にも2つのチップを開発しており、量子コンピュータを格納する極低温室の少し暖かい部分に設置し、より効率的に情報を処理することができるようになるという。これらの開発により、各低温室がより多くの量子ビットをサポートできるようになり、その結果、より強力な量子マシンが実現することになると説明している。SEQQCの既存の量子コンピューターはすでに数百個の量子ビットを搭載しているが、その真の能力を発揮できるほど強力になるには、数千個、あるいは数百万個の量子ビットが必要になるであろう。
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