原子時計は非常に精密で複雑な計時装置であり、その誤差は、何億年に1秒と言う、信じられないほどの高精度を維持することができる。現在、研究者たちは、時間計測においてさらに高い精度と信頼性を提供できる可能性のある原子時計の開発を積極的に模索している。
欧州X線自由電子レーザー施設(European XFEL)で最近行われた実験では、スカンジウムが1,000,000,000,000分の1の精度を誇る極めて精密な「原子核時計」としての可能性が実証された。このようなスカンジウムベースの原子時計は、研究者の説明によれば、宇宙の年齢の約22倍に相当する驚異的な3,000億年間、1秒たりとも狂うことのない程の精度を誇るという。
原子時計は、その卓越した正確さで知られ、化学元素の原子殻内の電子を利用して正確なパルスを発生させ、それによって時間を定義する。よく知られている”原子時計”はセシウム原子を使用しており、あらかじめ決められたマイクロ波放射周波数によって電子をより高いエネルギー状態まで上昇させることができる。高エネルギー状態になった電子は、マイクロ波パルスを吸収する。
原子時計は、エネルギー吸収が最大になるように放射周波数を微調整している。この共鳴によって、マイクロ波を発生させる水晶発振器の安定性が保たれ、例えば、米国商務省標準技術研究所のNIST-F2クロックは、約3億年経っても1秒の誤差も生じない。ストロンチウムベースの原子時計は、共鳴の幅が極めて狭い同様の技術を採用することで、150億年で1秒しか狂わないという、さらに高い精度を達成することができる。
しかし、計時精度をさらに高めるためには、電子励起の方法には限界があることは注目に値する。そのため研究者たちは、正確な時間を計測する新しい手段として、電子が存在する原子軌道レベルよりも低い原子核内のエネルギー遷移に着目した「原子核」時計の開発に多大な努力を注いできた。
研究者たちが指摘するように、核共鳴は格段に精度が高いが、その実現はより困難でもある。スカンジウムは1879年に初めて発見された希土類元素で、高純度の金属箔や二酸化スカンジウム化合物として容易に入手できる。科学者たちは30年以上前にスカンジウム共鳴の可能性を認識していたが、この共鳴には12.4キロ電子ボルトという可視光の約1万倍のエネルギーレベルのX線パルスが必要である。
ヨーロッパのXFELのような最近のレーザー技術の進歩は、この状況を一変させた。研究者たちはこの施設を利用して、厚さ0.025ミリのスカンジウム箔にX線レーザー光を照射し、励起された原子核による「特徴的な残光」を放出させた。この残光は、スカンジウムの共鳴線が極めて狭いことを示す証拠となる。
スカンジウム原子核の共鳴励起を達成し、そのエネルギーを精密に測定したことで、研究者たちは今、この超精密タイムキーパーに数多くの応用の可能性を思い描いている。専門家によれば、スカンジウム原子共鳴は、将来の核時計だけでなく、「超高精度分光法」や基礎物理現象の精密測定にも利用できる可能性があるという。スカンジウム原子時計は、”サブミリメートル距離”での重力時間拡張をプローブする可能性を秘めており、これまでアクセスできなかった長さスケールでの相対論的効果を調査する新しい手段を提供するかも知れない。
Nature誌に掲載された論文の中で、研究者たちは次のように述べている:「これらの進歩により、この異性体を極限計測学、核時計技術、超高精度分光学および同様の応用に応用することが可能になります」。
論文
参考文献
- DESY: Milestone for novel atomic clock
- via Interesting Engineering: Atomic clocks on the horizon: Unveiling the power of scandium
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