固体電池メーカーの QuantumScape は、初の 24層プロトタイプのリチウム金属電池セルをテスト用として EV OEM に販売することを発表した。サンプル「A0」と呼ばれるこの電池は、これまでで最も優れたQuantumScapeの固体電池技術を示すものであり、その出荷は、将来の電気自動車にエネルギー密度の高い高速充電電池をもたらす重要なマイルストーンとなる。
QuantumScape(QS)は、2010年に設立されたバッテリーテクノロジー企業で、現在電気自動車に普及している従来のリチウムイオン電池と同等のコストを実現する、拡張性のある全固体電池の開発を目標としている。
10年以上にわたる研究開発を経て、2020年にセラミックセパレーターの活用による「大きなブレークスルー」に到達したと発表したことで、QuantumScapeの事業は加速した。これをきっかけに、単層型の試作セルのテストに成功。最初のパイロット製造ラインの規模を2倍にした後、Quantumscapeは10層のセル、次いで16層のプロトタイプも開発したことを明らかにした。同社は2月に、日本にも研究開発センターを開設している。
今年2月、QuantumScapeは、15分間の急速充電サイクルを400回連続で行い、10%から80%の容量を補充しながら、初期エネルギーの80%以上を維持した単層セルを、業界で初めて公開している。
2022年第2四半期には、エネルギー密度の高い24層セルを売り出し、すでに社内テストに耐えていた。これらの最初の24層プロトタイプは、サンプルAセルと呼ばれ、車載用認定と最終的な生産に向けた3段階の旅の始まりを象徴している。各サンプル段階(A、B、C)は、数世代にわたる成熟したセルプロトタイプで構成され、テストと検証のためにOEMに提供される予定だ。
今日、QuantumScapeは、最初のA0プロトタイプ固体電池をEVメーカーに納入し、EVメーカーらが、自身でテストできるようにした。
ただし、これが即座にEVへの全固体電池の搭載に繋がるわけではなく、QuantumScapeは、EVやその他の電子機器において全固体電池が一般的になるまでには、まだ長い道のりがあると述べている。QuantumScapeのCEO兼共同設立者であるJagdeep Singh氏は以下のように述べている。
このマイルストーンを達成するために、特に今年直面した困難を踏まえて、私たちのチームのすべての努力と決意を誇りに思います。このマイルストーンによって最終目標に近づくことができましたが、この技術が製品化されるまでにはまだ多くのことが必要であり、私たちはこれからこの重要な仕事に目を向けていきます。
Jagdeep Singh – QuantumScape
QuantumScapeは、固体セパレータ、正極、リチウム金属負極で構成される24の層からなるサンプルA0は、試作セルの容量が「数A/時」の範囲であることを明言している。初期納入が開始されたことで、EVメーカーは、EVに関連する固体電池の社内テストを開始し、その性能についてフィードバックを提供することができるようになった。
今後の展望として、QuantumScapeは、この電池技術を市場に投入する前に、「生産プロセスの品質、一貫性、スループットの改善や、正極容量負荷の増加やパッケージング効率の改善など、製品側のさらなる強化など、まだやるべきことが山積みである」と述べている。
同社は、今後数年間に予定されているA、B、Cセルの試作世代を利用して、上記の要因を改善するつもりだという。
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